takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

科学技術

アトミックパワー・大いなる力の制御-3

日本には、54基の原子力発電炉がありました。しかし、福島第一の6基は全て廃炉が決り残るは48基、他に青森県大間に建設中のものが1基、山口県熊毛郡に計画されているものが1基あります。大きな産業のない田舎では、巨大なエネルギーを生み出す原子力発電所の…

アトミックパワー・大いなる力の制御-2

日本では昭和20年の敗戦後、連合国から原子力に関する研究が全面的に禁止されていました。しかし、昭和27年(1952年)4月にサンフランシスコ講和条約が発効し、原子力に関する研究は解禁されることになりました。 日本における原子力発電は、昭和29年(1954…

アトミック パワー・大いなる力の制御‐1

原子力発電(nuclear electricity generation)とは、原子核分裂力を利用した発電です。 現在の日本で主力の発電であるガス火力発電なら、天然ガスを燃焼させたエネルギーで水を沸騰させ蒸気を発生させます。石油や石炭も原理は全く同じです。原子力発電がこ…

アトミック パワー・解き放たれた力-11

前回は、パキスタン、「核兵器開発の父」アブドル カデイル カーン博士のことを少し書きました。彼は、日本を度々訪れ核兵器開発に必要な部品や装置を購入しています。例えば、共同通信のインタビューには「1984年に日本を訪れ、いくつか重要な部品を注文し…

アトミック パワー・解き放たれた力-10

マンハッタン計画の中ではできませんでしたが、その後の冷戦中に画期的なウラン濃縮方法が考えられました。ウラン235を分離するもっとも効率的な最新の方法は、ガス遠心分離機を使う方法です。もし皆さんが遊園地で高速回転する大きな円筒形の乗り物の壁に押…

アトミック パワー・解き放たれた力-9

マンハッタン計画の中で、最初の困難な課題はウラン235の濃縮でした。実際、ロスアラモス研究所に集まった世界中の優秀な科学者達は様々なアイデアを出し合い実験を繰り返します。 以前も書きましたが、地中から採掘される天然のウランは、99.3%が爆発しな…

アトミック パワー・解き放たれた力-7

今年は、最終的に福島の原子力発電事故のことを書きたくて、その前に原子力開発の歴史のことを調べながらこれを書いています。本の資料としては現在以下のもが手元にあります。 「オッペンハイマー」・中沢 志保著‐中公新書 「オッペンハイマー〈上・下巻〉…

アトミック パワー・解き放たれた力-6

マンハッタン計画を一言で言うと、第二次世界大戦中、ドイツの原爆開発に焦ったアメリカ、イギリス、カナダが原子爆弾開発・製造のために、科学者・技術者を総動員した計画です。ご承知の通り、計画は成功し原子爆弾が製造されました。さらに、1945年7月16日…

アトミック パワー・解き放たれた力-5

ここで、核兵器そのものについて触れておきます。マンハッタン計画で製造されたのは、原子爆弾です。後に「水爆の父」と呼ばれるエドワード テラーは、マンハッタン計画に参加した時から「より破壊力のある水爆を作るべき」と主張しましたが、その意見は取り…

アトミック パワー・解き放たれた力-4

いよいよ、マンハッタン計画に入ります。政治的な部分にはほとんど触れず、科学技術の分野に絞ってご説明します。 最初に年代を追った説明をします。1939年8月2日、レオ シラードが、アインシュタインの署名を得た手紙を合衆国大統領フランクリン ルーズベル…

アトミック パワー・解き放たれた力‐3

後に原爆の父と呼ばれたオッペンハイマーは、1936年33歳の若さでバークレーにやって来ました。彼は、新聞も読まずラジオも聴かないという生活を送りながら(当時まだテレビは一般的ではありません)、物理の研究に没頭していたようです。1929年にアメリカを…

アトミック パワー・解き放たれた力-2

当初、放射性物質から取り出すことができる大きなエネルギーは、凄まじい破壊力を持った爆弾として利用されました。平和利用なんて誰も考えないのです。 これから、10回ぐらいで核エネルギーを利用した2種類の爆弾とそれを作り上げた2人の父親(母親?)につ…

アトミック パワー・解き放たれた力-1

フエルミやシラードのアイデアによって、世界最初の原子炉「シカゴ パイル1号(通称CP-1)」は人間の力で制御しながら核分裂の連鎖反応が行えることを実証しました。1942年12月2日のことです。その後すぐに、核分裂の連鎖反応を一瞬で行い膨大なエネルギーを…

アトミック パワー・その黎明期-6

「RDD」、放射性物質散布装置(英:Rradiological Dispersion Device)のことを書こうと思ったのですが、あれは黎明期のものではありません。ごく最近のものであり装置というよりも兵器あるいは爆弾です。しかし、今の所実戦配備は確認されていません。ですの…

アトミック パワー・その黎明期-5

原子の力(アトミック パワー)は、19世紀末にその不思議な現象が確認され、20世紀初頭の物理・化学学会はその解明と応用にわき上がりました。しかし、1945年8月6日に広島、9日に長崎と原子爆弾が投下されその破壊力を見たときから人々の反応は少しづつ変化…

アトミック パワー・その黎明期-4

当然のこととは言え、19世紀末頃は放射線の危険性は認識されていませんでした。それは、20世紀初期の頃でもそれほど変りません。20世紀前半に作られた腕時計の長針・短針、あるいは文字盤には暗闇で光る放射生物質ラジウムが塗られていました。放射線と聞い…

アトミック パワー・その黎明期-3

欧州大陸側の科学者は大活躍の時期でしたが、その他の場所でも重要な発見がなされていました。1899年~1900年にかけてラジウムを研究していたニュージーランンド人のアーネスト ラザフォード(1871~1937年)が、モントリオールのマギル大学在職中に、アルフ…

アトミック パワー・その黎明期-2

昨日、ポーランド出身の女性科学者マリア スクウォドフスカ キュリーのことを、お話ししました。19世紀末の西欧には、アトミック パワーに注目し後に単位の名前になるような大勢の科学者がいました。マリーよりも、22歳年上で髭もじゃの写真で有名なヴィルヘ…

アトミック パワー・その黎明期-1

「放射能」と聞くとそれだけで恐ろしいものと感じる方もいます。昨年暮れの失敗学会年次大会で中尾政之東京大学大学院教授は、「現在、原子力専門の先生達の間では、” このまま原子力のことなど学校で教えて良いのか ”と言う問題で議論が行われている」、と…

ロルフ マキシミリアン シーベルトさんだけは覚えましょう-3

ロルフ マキシミリアン シーベルト氏(1896年~1966年)には、ルイス ハロルド グレイ氏(1905年~1965年)と言う名の同時代を生きたお友達がいます(本来の意味の友人ではありません、単位の仲間としての意味です)。 ある物質が放射線に照射されたとき、そ…

ロルフ マキシミリアン シーベルトさんだけは覚えましょう-2

シーベルト(Sv)は、SI単位に入っています。しかし、人体への影響を考慮して計算に用いられる係数は絶対的なものではありません。若干の誤差は含まれます。その辺りが、放射線の影響を難しく、かつ怪しくするもとになっていると思われます。しかし、誤差が…

ロルフ マキシミリアン シーベルトさんだけは覚えましょう-1

放射線の単位は色々あって混乱の元になることがあります。私の場合、医療機器製造に携わっていますので、個人的興味もあって色々調べて理解するようにしてきました。今日は、その中で一番重要と思われるところだけを簡単にお伝えしたいと思います。 放射線・…

一級建築士Aによる、耐震強度の偽装

2005年(平成17年)11月17日、国土交通省(国交省)は、マンション20棟、ホテル1棟の計21棟の耐震構造計算書に偽装があったことが発覚したと発表した。その後、次々にこれら耐震偽装に関する事実が露呈され、この事件関係者の国会喚問にまで発展した。 本事…

技術者の倫理的行動が安全性と品質を高めます

日本機械学会の倫理規定は、以下のようになっています。 1. 技術者としての社会的責任 会員は、技術者としての専門職が、技術的能力と良識に対する社会の信頼と負託の上に成り立つことを認識し、社会が真に必要とする技術の実用化と研究に努めると共に、製品…

アイスマンをめぐる新たな事実-ナショナルジオグラフィック ニュース

ナショナルジオグラフィックを見ていたら、この件もブログに残しておきたくなりました。1991年、アルプス山中で発見された凍結ミイラ、通称「アイスマン」のことです。昨日に引き続きもう一度脱線します。 アイスマンのことは、デイビッド ゲッツが『アイス…

ネアンデルタール人が歯科治療?

時々見ている、ナショナルジオグラフィック ニュースに面白い記事があったので、今日は脱線。 知能が未発達と考えられているネアンデルタール人だが、少なくとも歯の衛生に関しては違ったようだ。食後は楊枝(ようじ)を使っていた可能性が高い。 スペイン、…

技術者倫理、入門前-6

技術者の役割-2 一部の宗教家、哲学者、社会学者、市民運動家の方達は、科学技術というものに不信感や疑念を持って言います。平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災による津波被害で東京電力の福島第一原発1~4号機は大きく破損し、放射生物質を…

技術者倫理、入門前-5

1-そもそも、技術はなんのためにある 技術者の役割-1 技術者と言っても色々あって一括りで良いのか?と思うこともあります。しかし、科学者(真理の探究をする人達)ではなく、技能者(匠の技を持つ人達)でもないのですが同じ理系の仕事人に技術者(エン…

技術者倫理、入門前-4

二日も空けてしまいました。どうも身構えてしまって上手く纏まりません。身構えないで読める「技術者倫理」を書こうとして書いている本人が身構えてしまっています。 私の書きたいことの骨子は、以下の項目です。 1-そもそも、技術はなんのためにある 技術…

技術者倫理、入門前-3

最初に参考文献をまとめます。本の内容は、出版社のデータを元にして書きました。どれも良い本ですし、技術者倫理について何かを書くためには読む必要がある本です。科学技術に関心・関係のない方には面白くない本かもしれませんが、中には、そんな方にも面…