takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

福島原発事故

福島原発事故-24

事故当時から数日の間で下された判断の中で今もミス判断と言われているものが、大きく4つがありました。 地震翌日の12日朝にベントが遅れていたので、菅首相が福島第一原発に乗り込んで活を入れたこと(しかし、吉田所長に決死隊を作ってベントを開けますと…

福島原発事故-23

福島第一原発事故の直接的な技術的要因は、福島第一のl~ 4号機だけが、多重化で準備されていたはずの交流電源・直流電源・配電盤が揃って全滅したからです。全く電気が無い状態でしたから、非常用装置が動かないだけでなく、原子炉内部の状態を表示する制御…

福島原発事故-22

久しぶりに、原発の話に戻ります。 東京電力(東電)は、首都圏を含む関東一円に電力を供給する、日本最大の電力会社です。その販売電力量は、日本全体の約3分の1に当たる2934億kWh(2010年度)で、イタリアー国の消費電力に相当します。 それほどの、大電力会社…

原子力安全委員会と原子力安全・保安院-2

平成23年(2011年)3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、日本の原子力行政に大変な衝撃を与えました。原子力発電を推進する「資源エネルギー庁」にとってはまさに死活問題です。当時の民主党政権は、原子力を推進する「資源エネルギー庁」…

原子力安全委員会と原子力安全・保安院-1

原子力事故の話に戻ります。 ここで書いている記事は、5つの報告書を精査しレポートに纏める中の一部です。全て書くことはできないのですが、原稿料が入る訳ではないので半分以上は公開しています。ただ、話があっち、こっちに飛ぶためブログの読者の方には…

福島原発事故-21

昨日、ご説明しましたフェール セーフを使って、もう一度1号機の状況を説明します。 3月11日15時37分(地震発生からおよそ1時間後)l号機は直流を含む全電源を喪失しました。中央制御室は真っ暗です。また、直流電源の喪失により、各種の計器もすべて表示し…

福島原発事故-20

今回から少し専門的な話になります。なるべく、専門用語を使わないでご説明するつもりですが、ゼロにはなりません。その都度ご説明します。今回は、5つの需要な言葉の説明です。順番に行きましょう。 以下、「IT用語辞典 e-Words」より フェイル セーフ【 fa…

福島原発事故-19

寺田寅彦(1878年(明治11年)11月28日 - 1935年(昭和10年)12月31日)と言う物理学者兼随筆家をご存知でしょうか。夏目漱石の弟子と言うよりは友人であり、『吾輩は猫である』の水島寒月や『三四郎』の野々宮宗八のモデルとも言われています。 その寺田寅彦…

福島原発事故-18

今日は、3月11日です。平成26年西暦だと2014年ですから、平成23年の東日本大震災から3年経ちました。テレビでは特別番組を放送するようですが、あれほどの災害であっても世間一般ではだいぶ薄れているようです。もっとも、人間とはそう言うものなのでしょう…

福島原発事故-17

今回は少し趣向を変えます。 東京電力は、自身のサイトで福島原発の現状を伝えています。 私は、文字だけで震災時の状況をお伝えしていたのですが、どう考えても写真や図があった方が分かりやすいですから今回はそれをまとめます。 福島第一原子力発電所 1…

福島原発事故-16

4号機で起こつたことの概略 4号機は、2010年11月30日(事故の3.5カ月前)から定期点検に入っていました。圧力容器内のシュラウド(圧力容器内の機器を支えるステンレス製の円筒、強い放射能を持つ)を交換するという大規模な工事が予定されていた関係から、全…

福島原発事故-15

3号機は、全電源喪失後直ちに炉心冷却設備RCICが起動し、約20時間運転した後に自動停止しました。その後まもなくHPCIが自動的に立ち上がり、3月13日午前2時42分まで炉心の冷却は継続できていました。しかし、マニュアルにはない高圧注水設備HPCIの長時間の運…

福島原発事故-14

2号機で起こつたことの概略 2号機では、全電源喪失後に運転員の工夫や努力もあって、炉心冷却設備RCICが想定を超える長時間運転を続けました、その時間は70時間に及びます。しかし、地震発生から3日近くたった14日13時頃には、原因は不明ですがRCICは自然に…

福島原発事故-13

それでは、今日から4回に分けて1号機から4号機まで地震発生から数日間の状況を大まかにご説明します。 地震発生後、1号機ではIC(lC : lsolation Condenser-非常用復水器)が自動起動し、スクラム後の炉心の冷却は順調に行われていたのですが、津波による浸…

福島原発事故-12

ここで、もう一度1~4号機の状況を整理します。 1)1号機 使用済み燃料-292本 津波後3時間で炉心損傷開始 津波後24時間で水素爆発 2)2号機 使用済み燃料-587本 津波後76時間で炉心損傷開始 水素は換気窓から抜けたため、水素爆発はせず 津波後73時間で格…

福島原発事故-11

水素爆発は、コンクリートでできている原子炉建屋を吹き飛ばすほどの威力があります。では、爆発した1,3,4号機にはどれくらいの水素があったのでしょうか。 水素の物理的性質として、爆発できる空気との混合比率は、下限は4.10 %、上限は74.2 %もあります…

福島原発事故-10

原発事故の防止は「止める、冷やす、閉じ込める」だと言われています。3月11日の震災では、停止することはできましたが、冷やすことができず結果として閉じ込めることに失敗しました。放射性物質をまき散らす原因となったのは原子炉建屋の水素爆発です。ここ…

福島原発事故-9

少し余談になりますが、私は、福島、宮城、岩手の三県出身者にほとんど知り合いがいません。そのため、震災の被災者にも知り合いはいませんでした。そんな私ですが、ただ1人だけ、東日本大震災の被災者で私の唯一の知り合いに渡辺隆行さんと言う方がいらっし…

福島原発事故-8

福島民報という福島県の地元新聞があります。当然なのかも知れませんが、この新聞社は精力的・継続的に福島原発の事故を取上げ詳細な報道を行っています。東日本大震災に関する新聞社のデータベースとしては、最も充実していると言って良いでしょう。宮城県…

福島原発事故-7

昨日はあまりに手抜き記事だったので、今日も書くことにします。実際に資料を何冊も読みながら書き進めているので時間は足りないのですが愚痴を言っても何もなりません。間違った説の流布や、都市伝説的な話を広めないために続けたいと思います。 今回の事故…

福島原発事故-6

東北太平洋沖地震の規模は、記録が確かなものだけを比較すると人類史上世界4位の大きさです。以下に並べてみましょう。 地震マグニチュードによる比較 M9.5 1960年 チリ地震 M9.3 2004年 スマトラ(インドネシア)地震 M9.2 1964年 アラスカ地震 M9.0 1868年…

福島原発事故-4

当日の状況 福島第一原発は、東京電力が最初に建設し営業運転を開始した原子力発電所です。場所は、福島県浜通りの双葉郡大熊町と双葉町にまたがり、広さは350万平方メートルあります(大雑把に1900メートル×1850メートルぐらいの広さです)。 地理的に書く…

福島原発事故-3

地震と津波-2 高波、高潮、津波この3つの自然現象は、時々間違われることがありますが、全く異なる現象です。 高波:波浪とも言います。強い風によって引き起こされる水面の上下運動です。また、船舶などが航行することによって後方につくる波は引き波と呼ば…

福島原発事故-2

地震と津波-1 通称「東日本大震災」は、東北太平洋沖地震を発端とする津波や余震・原発事故までを含めた自然災害です。日本政府は、震災による直接的な被害額を16兆円から25兆円と試算しています。この額は、被害が大きかった岩手・宮城・福島の3県の県内総…

福島原発事故-1

序章-1 そろそろ、福島原発のことに入ろうかと思います。原子力のことは30回ぐらい色々と書きましたからこのブログを読んで下さった方なら基礎的な知識は十分ではないかと思うからです。今年1年、技術士試験のことを書く時以外は、福島原発の事故について書…