takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

原子力安全委員会と原子力安全・保安院-2

 平成23年(2011年)3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、日本の原子力行政に大変な衝撃を与えました。原子力発電を推進する「資源エネルギー庁」にとってはまさに死活問題です。当時の民主党政権は、原子力を推進する「資源エネルギー庁」と規制する「原子力安全・保安院」が同じ経済産業省の中にあることに問題があると考えました。なにしろ、同じ人間が省内の異動によって推進と規制を往復する人事交流が普通に漫然と行われていたのです。さらに、規制対象である電力会社に再就職した退職者が規制行政に干渉するなど、規制機関がその機能役割を果たしていなかったことも原因の一つと考えられました。特に東京電力は、待遇が良かったため大勢の退職者が再就職しています。

 

 この反省に基づき、原子力安全委員会原子力安全・保安院は廃止されました。そこで今度は経済産業省ではなく、環境省に新たに外局として原子力規制に関わる部署を設け、原子力安全・保安院内閣府原子力安全委員会等、原子炉施設等の規制・監視に関わる部署をまとめて移管することが検討されました。

 

 議論の過程では内閣府の下に規制機関を新設する案や、より独立性の高い国家行政組織法3条に基づく委員会(行政委員会、三条委員会)とする案なども検討されました。しかし、環境省の外局として「原子力安全庁」を新設する案が採用されました。その「原子力安全庁」中にできたのが原子力規制委員会です。

 

 環境庁は、2011年(平成23年)8月に制定された放射性物質汚染対処特措法に基づき、原発事故で放出された放射性物質(事故由来放射性物質)による環境の汚染への対処に関する施策を環境省が所管するなど、「原子力の安全の確保に関する規制の一元化の観点」があったからです。

 

 規制委員会のメンバーは委員長を含め5名です。

 

委員長

田中俊一 - 工学者(原子炉工学)、元日本原子力研究所東海研究所副理事長、元 原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長

 

委員

島﨑邦彦(委員長代理) - 地震学者、東京大学名誉教授、元日本地震学会会長、元地震予知連絡会会長

田豊志 - 工学者(原子炉安全工学、核燃料工学)、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長

中村佳代子 - 放射線医学者、日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査、元慶應義塾大学医学部放射線科専任講師

大島賢三 - 外交官、元国連大使、元国連事務次長

 

 

 地震学者を入れたところが上手いですね。でも、今度はテロ攻撃が原因で原発事故になるかも知れません。そうなったら、田母神氏も委員会に入れるのでしょうか?あるいは、飛行機が原発に墜落して重大事故に進展するかもしれません、その場合は、どの分野の学者を入れるのでしょう。航空工学でしょうか?

 

 皮肉を言って遊んでいる訳ではありません、巨大なエネルギーを持つものは何でも危険です。それを、制御して人と社会に役立てて使うことが技術です。福島の事故を経験して原子力安全に関する考え方は随分変ったと思います。日本では発生しないと言われていた、過酷事故が発生したのです。言い換えると安全制御の技術が不足していたのです。

 

 環境庁は、経済産業省と異なり原子力推進派ではありません。また、委員長の田中先生は、東海村でJCO事故も経験されている方なので原子力事故の怖さも対策も理解されていると思います(私ごときが、言うことではありませんけど)。

 

 政治の世界では、原子力推進派が選挙で勝っています。私はメリットとデメリットの十分検討しないで「ストレステストを受けたから大丈夫」と原発を動かすことに反対です。ただし、安全を十分確認した上で、社会全体としてデメリットよりメリットが大きいと判断して原子炉を稼働させるのでしたら賛成します。何度も書いていますが、火力も水力も、あるいは太陽光や風力発電も危険は多くあります。