takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

福島原発事故-23

 福島第一原発事故の直接的な技術的要因は、福島第一のl~ 4号機だけが、多重化で準備されていたはずの交流電源・直流電源・配電盤が揃って全滅したからです。全く電気が無い状態でしたから、非常用装置が動かないだけでなく、原子炉内部の状態を表示する制御盤も何も表示せず、電灯もつかず、エアコンも効かない状態でした。これでは、何をやるにも遅くなり時間が掛かります。さらに、発電所内は、PHSで連絡を取り合っていたのですが、これも一日程度でバッテリーが切れ、後は連絡を取り合う事さえ難しくなりました。これも、事故の対応を遅らせた原因の一つです。そして、その遅れが命取りになりました。

 

 一方で、他の原発では津波後も、交流電源・直流電源・配電盤のうち、少なくとも一つは生きており、電源を融通しあったり、電源車から配電盤に接続したりして、とにかく短時間のうちに冷却装置を稼働させることができました。特に、配電盤が生きていると電源車と呼ばれる小型発電機を搭載した自動車から電気を融通させることができます。福島第一は、配電盤も津波で全滅でしたから外から電気を入れることもできませんでした。

 

 加えて、組織的な要因もあります。海外の原発では、全電源喪失を想定して人力の2輪車(リアカーの様なものです)にバッテリーを搭載した装置が用意され、電源を失った時にそのバッテリーを使って復旧作業を行う訓練も行われていました。しかし、日本では「そのような事態にならない」と、決め込んで海外の事情を知りながら訓練も行いませんでした。これは、リスク管理が甘過ぎると言われても仕方がないでしょう。

 

 特に、全電源喪失が数時間続いても冷却装置を稼働できるように、懐中電灯で暗閣を照らし放射線防護服を着ながらでも現場でバルブを手動で開けて圧力容器を減圧する作業を準備・訓練していたら、3・11ほどの地震津波であっても、レベル3~4程度の事故で済んでいたはずです(1号機だけは、微妙ですけど)。

 

 もう一つ、非常用ディーゼル発電機は、せめて別々のところへ設置すべきでした。特に後から追加した4台は海側ではなく、陸側に設置すればよかった。これも、海外では同じところに非常用設備は設置しないことが常識化しているのに、日本は自分たちの方が優れているからと海外のやり方を取り入れようとしなかった。返す返すも、残念なことです。