takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

人類=ホミニン=Hominins-7:ピルトダウン人

 その後も考古学の進歩は続きます。すると後から発見、掘り出された世界各地で古人類化石は、ピルトダウン人と矛盾することが分かってきました。1920年代には中国で北京原人が発掘されました。次に、南アフリカではアウストラロピテクス・アフリカヌスが発見され、その他にも様々な進化段階の化石が発掘されたのです。
  資料がどんどん増えることで、人類の進化の内容が次第に明らかになって行きます。第二次世界大戦前(1930~1940年頃)では研究はまだ充分とは言えませんでしたが、人類はまず直立二足歩行が先に始まり、脳の進化はその後だったことがわかってきたのです。そうなると、頭蓋骨が著しく発達しているピルトダウン人は進化の流れから外れてしまいます。ウッドワード卿が説いた更新世初期というような古いものではなく、更新世中期かそれ以降のものではないかとも考えられました。

 加えて、ピルトダウン人の化石が発見されたはずの地層からは、ドーソンの没した1916年以降一切の化石の出土が見られなかったのです。
 しかし、当時(1940年代頃)、化石は厳重に保管されて理化学的検査も認められなかっのです。そのため、捏造を立証し得る確たる材料も無く、1940年代の終わりまでに250編もの論文が発表されました。言い換えると、世界中の学者は、ピルトダウン人の化石を本物として考え、そこから人類の進化が考察されました。アウストラロピテクス・アフリカヌスのところで説明しましたが、後から出てきた頭蓋骨の小さな古人類の化石が人類の祖先と認められなかったのは、ひとえにこのピルトダウン人のせいなんです。
 それでも、ピルトダウン人化石の正体は暴かれました。世の中に出てきてから30年近くを経た1950年、これは捏造されたものだと分かりました。

 骨が地中に埋もれると、土中の水分や地下水に含まれる微量のフッ素が骨組織内に入り込み、フッ素の含有量が増えていくという性質があります。。したがって、骨に含まれているフッ素の量を測定すればその古さを概ね推定することができるのです。絶対的な正確さではありませんが、当時でも大体の年代は判明するようになりました。
 もちろん、水分中のフッ素量は地域によって異なります。ですが、同一地点や近接した地域から出たものの相対的な古さを知ることはできたのです。
 この手法は、第二次世界大戦後に大英博物館のケネス オークリーによって確立されました。

 1950年、フッ素法によりピルトダウン人頭骨の検査が行なわれ、その骨が1,500年以内のもので、人類の祖先の化石とは言いがたいとの結果が導き出されました。 加えて1953年には、オークリー率いるオックスフォード大学の研究者らによるいっそう精密な年代測定と調査・分析が行われました。
結果として以下のことが判明します。

  • 下あごは、オランウータンの骨であること
  • 臼歯の上面は、人類のものと似せて成形されていたこと
  • 頭蓋骨は、間違いなく1,500年程度以前の人類の骨であること
  • 一緒に出土した、石器や獣のの骨は、古く見えるように薬品で着色されていたこと
  • オランウータンの下あごと人類の頭蓋骨は、サイズが異なり接合できないため、本来の接合部分は、除去され分かり難く成形されていたこと等

 捏造の犯人は、誰でしょう?恐らくドーソンでしょう。とわ言え、本人は死んでしまって正確なことは分かりません。この後、ピルトダウン人を支持した学者達は、古人類学者として研究を続けることはできなかったようです。