あの頃は燃えた、熱かった『日本オーディオ界の』70年代、80年代-16
1966年に3chマルチ(計6台のアンプ)を一台のキャビネットに収めたプリメインアンプ、トリオ・サプリームⅠが発表されました。マニアの究極の理想はマルチアンプシステムです。これを実現するにはプリアンプ、チャンネル・デヴァイダー、4~6chのパワーアンプと大がかりなシステムが必要と思われていました。ところがサプリームⅠはこのすべてを1台でやってしまうのです。当時は、がぜん話題になり、「サプリーム」はトリオの高級ブランドのような形になり、『サプリーム』という月刊誌まで発売されました。もっとも、トリオのPR誌に近いものです。お金も相当出していたでしょう。
その後68年にオンキョーがMC-2200というセパレート・ステレオを発表しました。アンプを四台搭載した3ウェイ2chのマルチアンプ方式です。これがセット ステレオのマルチ化第一号とされていますが、たちまち全メーカー右へならえでマルチの全盛となります。一般の人はこぞって多チャンネルシステムを購入しました。
しかし、これは専門家やマニアには不評でした。おもちゃのようなアンプを何台組み合わせても所詮おもちゃです。それよりも、しっかり設計され作られたアンプが1台あった方が良いのです。
ある意味、60年代はセットステレオを普及させた時代です。家の居間に大型のステレオがあると言うことはステータスだったのです。
例えば、有名人の「御自宅拝見」などでは、必ず大きなセットステレオが居間に置いてあったりしたのもこの時代です。
今なら、音楽を聴くためだけのためにこんな大きな装置を家の中に置いたら変人扱いされるかもしれません。
ちなみに、通常私たちが聴いている音楽は左右2chのステレオです。AMラジオは、左右の区別をしませんからモノラルです。では、4chとはどうなっているのでしょう。
実は、この4chにはいくつかの方式がありました。そして、その方式の違いによって普及にも差が付き最終的には「誰もいなくなった」のです。では、代表的な二つの4ch方式を紹介しましょう。
1)ディスクリート方式4チャンネルステレオ
4チャンネルある入力信号をそれぞれ個別に記録して、それぞれ個別に再生する方式です。たとえば磁気テープ4トラックを用いて4チャンネル録音する方式がこれにあたります。別名、完全分離方式4チャンネルステレオとも呼ばれました。
2)マトリックス方式4チャンネルステレオ
4チャンネルある入力信号を混合して録音し、再生時に混合されて記録された信号から各チャンネルを分離して再生する方式です。
要するに、「4チャネル録音」⇒「 2チャネル伝送 」⇒「 4チャネル再生」方式です。
また、この方法は、2チャンネルステレオ録音の記録から擬似的に4チャンネルステレオで再生する技術にも応用できました。
続きます。