日経サイエンス2015年3月号より
日経サイエンスは、毎月購読している雑誌です。
その最新号である、3月号は「STAPの全貌」と特集を組んでいます。私は以前このブログでも書いたとおり、あれは過去に何度もあった科学者自身の誤解に基づく誤発表です。ただ、理化学研究所という日本最高の研究機関による発表だったから話が大きくなったし、あの女性科学者もマスコミ受けするキャラクターだったからあんなに大きな話になったのでしょう。常温核融合なんてオカルトは、20年以上たってもまだ生き延びています。
そんなものより3月号には、小さな記事ですが驚くべきアイデアが載っていました。
心臓のペースメーカーを付けている人は米国なら300万人、日本は20万人ぐらいです。ペースメーカーは電池で動きます。また、回路も劣化するため通常5~8年程度で交換します。交換と言っても心臓の横についている装置ですから手術が必要です。ターミネーターなら、胸のカバーを外して簡単に交換できますが、人間の場合そうは行きません、不便ですね。
そんな、ペースメーカーですが、スイスのベルン大学の生体医工学者達は心臓の鼓動を使って自動巻システムで発電するペースメーカーを考えました。
手首の動きで自動巻のぜんまいが巻けるなら、心臓の動きでもできるはずです。研究チームは、3センチ幅のケースに封入した巻き上げ機構を豚の心臓に縫合する手術に成功、見事50マイクロワットの発電を可能にしました。ペースメーカーは、10マイクロワットあれば動かすことができます。
現在は、まだ試験的な装置ですが研究が進めば交換不要なペースメーカーを作り出すことができるでしょう。再手術不要、一生使えるペースメーカーです。もっとも、はじめは電池も搭載して万一の時は、電池でも動くように作るはずです(日本では厚生労働省の許可がおりないかもしれません)。
世界初のクオーツ腕時計「アストロン」は、日本のセイコーが作りました。これも、当時スイスの技術を応用したのですが、自動巻ペースメーカーは、どこのメーカーが商品化するのでしょう。今から楽しみです。