takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

中部電力浜岡原子力発電所で発電機もタービンが損傷

2006年(平成18年)6月15日、静岡県御前崎市にある中部電力浜岡原子力発電所で発電機もタービンが損傷して自動停止し、続いて原子炉が自動停止した。

タービンのカバーを外して内部点検したところ、低圧タービンの外側から3段目の動翼1本が、車軸への取付部が折れて脱落していた。同様の翼を検査したところ、840本中663本の動翼で損傷が発見された。試験運転中に、タービン本体の設計時に想定されなかった異常振動が起きたことによる金属疲労が原因と推定される。仮復旧での運転再開までに9ヶ月間を要した。

 

経過

浜岡原子力発電所5号機は、定格熱出力一定運転(出力1,406MW)していたところ、6月15日午前8時39分に、「タービン振動過大」の警報が鳴り、タービンが自動停止した。続いて原子炉降圧操作を行い、6月17日午前11時3分に炉水温度100℃以下で停止した。このトラブルでは、放射線の漏洩などの被害はなかった。

 

図2に発電機の構造を示す。発電用タービンは、高圧タービン1つと低圧タービン3つから構成され、警報は低圧タービンBの両側の軸に取り付けられた第5軸振動検出器と第6軸振動検出器で検知された異常に大きな振動によって発信された。

 

原因

脱落した翼の破面を観察した結果、高サイクル疲労特有の模様(ビーチマーク)が確認された。これと運転履歴を照合し、さらに低負荷運転時の応力を解析した結果、破断原因は以下のように推定された。

試運転中に実施した出力20%の負荷遮断試験時に、低圧タービン内に「蒸気流の乱れによる不規則な振動(ランダム振動)」(図3)と「出力遮断時などに起こる一時的な蒸気の逆流(フラッシュバック)による翼の振動」(図4)とが同時に発生し、それらが重なり合って繰返し作用したことで、高サイクル疲労によってひび割れが進展し、最終的には定格運転時[ * ]の回転による遠心力に耐えられず破断・脱落に至った。

損傷したのは新型タービンで、高効率化のために従来より大型に設計されていた。

設計当時の知見ではランダム振動の発生領域は主に第14段とされていたため、第14段と第13段には振動対策が施されていたが、第12段への影響は想定されていなかった。

また、無負荷および低負荷運転時のフラッシュバック振動は一時的なもので、メーカ側は強度の観点で問題ないとしていた。ユーザ側は、試験運転が定格運転より安全であると考え、メーカの想定以上に試験運転を行った。

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

この発電機を設計・製造したのは日立製作所である。もちろん、この事故が日立の責任とは言えないと思う。しかし、日立製作所では自らのサイト内で「ニュースリリース」として事の詳細を発表している。

この事故は、通常運転よりも低い(出力20%)負荷で試験運転している時に予想外の振動が発生してタービンが破断したというものである。事故を起こした、中部電力浜岡原発5号炉の発電用タービンは、定格出力135万kW級、毎分1,800回転機として世界で初めて設計されたものである(改良・沸騰水型)。実際の使用状況に合わせた設計検証は甘かったのかもしれない。何でも、そうだが世界初のシステムには世界初の事故がついて回ると考える必要がある。ちなみに上記事故では、人的被害はゼロ。しかし、発電機の停止と修理に掛かった費用を合わせると1,500億円。

新幹線もそうかもしれないが、原子力発電は科学技術の分野であるにもかかわらず、政治家の玩具になっていると思う(今さらだけど)。動くお金が巨額なものだからそうなるのだろう。以前、機械学会で「技術者倫理」の講座を受講したさい、ある有名大学の倫理調査会の方が講師としてお話しして下さった。その方は、「自分は社会科学の分野で研究しているから分らなかったが、医学部は動く金の額が違う・・・」と話されていた(詳しく書けなくて申し訳ない)。

巨額のお金が集まるところでは、その金に群がるアリで真っ黒になる。それが、税金という広い範囲から薄く集められた金であればなおさらである。と、言って科学者・技術者だけで新幹線を通したり、海辺に原子力発電所をつくることはできない。さらに、科学者・技術者はお金にクリーンであるとも言えない。月並みな言い方だが、安全で快適な社会を作るためには、科学技術に携わる人達と法律・行政に携わる人達がそれぞれの分野で協力しあって行くしかない。その際、透明度の高い情報公開と一般の人に伝わる、分りやすい説明が必要なのだと思う。

タービンの破断から、変な方向へ話しがずれた。明日は、もう一度、気候変動に挑戦する。

 

//// 関係の無いお知らせ ////

 

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