ハラールとハラーム-3
アルコールそのもの、また、アルコールが入っている食べ物、(熱でアルコールが飛んでいても不可)これも絶対禁止の食物です。食器や調理室をアルコールで殺菌することも許されません。そのため、アルコール殺菌の必要がないコーティングされた紙皿を使ったり、消毒剤に次亜塩素酸ナトリウムを使ったりします。
日本へ旅行にくるムスリム(イスラム教信者)の方は日本のお菓子(和菓子、洋菓子)が好きな方が多いそうです。万一、皆さんがそのような方々に「おもてなし」をしなければならない場面に遭遇したらアルコールが入っていないことだけは、確認してあげて下さい。日本では、ハラール認証を取得しているレストラン、フード店は非常にすくないのでそれを教えるだけでもムスリムの人達に喜ばれます。以前書いた私の知り合いである、エンジニアのムスリムは、日本のショートケーキがたいへん好きで一度に二つも食べることがあるそうです。また、日本の食べ物の中では、蕎麦と饂飩が美味しくて、安心して食べられるそうです。今度、機会があれば天ぷら屋に誘ってみようかと思います。
ところで、ムスリムはが多い地域はどこでしょうか?一般的に中東、北アフリカと答える人が多いのですが、人口で言うなら東南アジアです。特にインドネシアは、人口2億4000万の大国ですが、その76.5%1億8600万人がムスリムです。ただし、インドネシアは世俗主義を標榜しており、シャリーア(イスラム法)による統治を受け入れるイスラーム国家ではありません。とはいえ、ムスリムはジャワ島やスマトラ島など人口集中地域に信者が多いため、人の多い地域に行くとイスラム色が非常に強く感じられるでしょう(私は、行ったことがないため、聴いた話です)。
さて、ハラールの根拠はどこに書かれているのでしょう。食べ物に関してはクルアーン(コーラン)の5章3節、4節に以下の文があります。
5:3.あなたがたに禁じられたものは、死肉、(流れる)血、豚肉、アッラー以外の名を唱え(殺され)たもの、絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、(ただしこの種のものでも)あなたがたがその止めを刺したものは別である。また石壇に犠牲とされたもの、籤(くじ)で分配されたものである。これらは忌まわしいものである。今日、不信心な者たちはあなたがたの教え(を打破すること)を断念した。だからかれらを畏れないでわれを畏れなさい。今日われはあなたがたのために、あなたがたの宗教を完成し、またあなたがたに対するわれの恩恵を全うし、あなたがたのための教えとして、イスラームを選んだのである。しかし罪を犯す意図なく、飢えに迫られた者には、本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。
5:4.かれらは何が許されるかに就いて、あなたに問う。言ってやるがいい。「(凡て)善いものはあなたがたに許される。あなたがたがアッラーの教えられた仕方によって訓練した鳥獣があなたがたのために捕えたものを食べなさい。だが獲物に対して、アッラーの御名を唱えなさい。アッラーを畏れなさい。本当にアッラーは清算を極めて速くなされる。」
他にもあるのですが、代表的な2節はこの部分です。
また、もしクルアーンをお読みになるなら亡くなった井筒俊彦氏の『コーラン』岩波文庫・上中下全3巻がお薦めです。新品なら3冊で3000円程度、古本なら1200円程度で購入できます。ごくまれに、ブックオフで100円で売られている場合もあります。1964年に出版された本ですが、井筒訳の『コーラン』は、厳密な言語学的研究を基礎とした秀逸な訳です。50年を経た現在でも専門家から高く評価されています。