takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

あの頃は燃えた、熱かった『日本オーディオ界』の70年代、80年代-10

 カセットテープには、形状の他にもテープそのものの種類がいくつかありました。

ノーマルテープ

クロムテープ

メタルテープ

 上記3種類が広く普及したものです(他にもありましたが、広まりませんでした)。

 また、後には高級ハイポジションノーマルテープというものも発売されています。実際には、それぞれに一長一短がありどれが最高とは言えないのですが、ダイナミックレンジで言えば、メタル>クロム>ノーマルの順で小さくなって行きます。逆にノイズ特性は、ハイポジションノーマル>メタル>クロム>ノーマルの順に悪くなります。さらに、低域中域の出力特性は、メタル>ハイポジションノーマル>ノーマル=クロムとなっていました。それでも、平均を取ればメタルテープが良かったのだと思います。

 また、デッキの方は、テープに音を記録するための磁気ヘッドに様々な工夫を凝らしていました。ヘッドには、音を消去するための消去ヘッド、記録するための録音ヘッド、再生するための再生ヘッドと三つの磁気ヘッドがあったのですが、それを録音と再生は一体として消去ヘッドと録音再生一体型の二つにするか、あくまで別々の3体構成にするかで、完全独立3ヘッド VS 一体型2ヘッドの製品が火花を散らして戦っていたのです(低価格のものの中には3つの機能を一つのヘッドにしたものも、あったと思います)。

 特に、高級カセットデッキを販売していたナカミチやアカイは完全独立3ヘッドの製品を出していました。ナカミチは、後にフルオートリターンデッキを発売しましたが、なんとカセットデッキのドアが開いて、テープが飛び出し反転して元に戻るというアクロバット的なカセットデッキを発売しました(RX-505)。これも、モータで反転させてテープの進む方向を変えたのではヘッドの構成が表と裏で変わってしまうという理由で開発したのです。

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上記がカセットテープが飛び出して反転する世界初のカセットデッキ、RX-505。

 この頃の高級オーディオ機は、見ているだけで本当に楽しかったのです。パソコンの比ではありません。まさに、エレクトロニクスとメカトロニクスの融合体でした。70年~80年に掛けてメーカで製品を開発していたエンジニアは、私より15~25歳ぐらい年上だと思うのですが、もし、このブログを見かけて開発の苦労話でも思い出しましたら、ぜひ、コメントでもメールでも頂けると助かります。もちろん、秘密事項は厳守します。