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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

技術者倫理・チャレンジャー号の爆発事故とシティコープタワーの倒壊回避-1

比較するための事例は2件とも過去にのこブログで取上げています。

 

2013年11月17日の「一級建築士Aによる、耐震強度の偽装」

2013年1月28日の「スペースシャトル チャレンジャー号の爆発事故」です。

 

 手抜きで過去記事の比較検討を行う訳ではありません(それも少しあります)、工学を学ぶ方に是非考えて頂きたい問題だから、この2つの事例を比較します。また、技術士試験を受ける方には大いに参考になる問題だと思います。間もなく、平成26年度の受験申込みが始まります、申込みをされる方は真剣に考えて下さい必ず役に立ちます。

 

 また、2013年11月17日の「一級建築士Aによる、耐震強度の偽装」の方は、耐震強度の問題ではなくこの時の記事の後半に載せたシティコープタワーの設計ミスに関する問題を取上げています。

 

 先ずは、2つの事例の片方をご説明しましょう。

 

スペースシャトル チャレンジャー号の爆発事故

 1986年1月28日に世界中の人びとが見守る中で、チャレンジャー号は爆発しバラバラに分解飛散しました。フロリダのケネディ宇宙センターから発射されたチャレンジャー号は、打ち上げ73秒後に炎に包まれ、爆発炎上し、「宇宙に出た高校教師」クリスタ マコーリフを含む搭乗員7名全員が死亡しました。この日、フロリダは記録的な寒波に見舞われていて、打ち上げ時の気温は摂氏2.2度という低温でした。それまでの打ち上げよりも約10度も低いという特異な条件だったのです。事故は、この異常な低温が事故の原因につながっていたのです。

 

 この事故は、ある技術者によって予測された事故でもありました。その技術者は、爆発したシャトルのブースター部分を製造していた、モートン=サイオコール社のエンジニア、ロジャー ボイジョリー氏です。彼は、シャトルが低温の環境に晒されると、燃料タンクからの燃焼ガス漏れを防ぐOリングが弾性を失いシール効果がなくなってしまうことに気づきました。そのため、データを集めながら、上司を説得しシャトルの打ち上げ延期を要請したのです。

 

 彼は、次のように話しています。

 

 

1981年11月、シャトル2回目の打ち上げ後の点検調査をした際に、1次リングに53,000分のlインチの浸食を見つけました。燃焼ガスが漏れてはまずい部分です。エンジニアリングの常識からすると、その時点で次の打ち上げを中止し,計画全体を見直し,設計変更をします。

 しかし、3回目と4回目の打ち上げが行われ、7月4日にエドワード空軍基地でレーガン大統領は、シャトル計画は運用段階に入ったと発表したのです。われわれは耳を疑いました。それは、もう研究開発の段階は終わったので、シールの欠陥を改善しないまま、シャトルを飛ばし続けろということだからです。結局14回打ち上げ、その間もO-リングに欠陥が見つかりましたが、幸いにもそれらはささいなものでした。

 こうした状況の中で1985年1月を迎えたのです。私も打ち上げに立ち会いました。私が現場に立ち会った数少ない打ち上げです。気温は19℃と暖かい日でした。しかしその前の数日聞は非常に寒かったのです。実は15回目の打ち上げ後に点検をした際、 2か所のジョイントで大量に燃焼ガスが漏れていました。lか所は80度の弧を描いて焦げたグリースが付着し、もう一方には110度の弧状に真っ黒なグリース。通常はハチミツ色のグリースが靴墨のようでした。本当に驚きました。このままでは予定された有人飛行は失敗し、宇宙飛行士たちの命を奪うことになると。

(2003年10月23日ユタ州プローパでのインタピューより要約)

 

 

 繰り返します、チャレンジャー号打ち上げの前日、打ち上げ地点の夜間気温が、それまでのシャトル打ち上げの最低気温を大きく下回る華氏18度(摂氏マイナス8度)と予想されていることを知ったボイジョリー氏らは、このような低温では,シールの密閉性能が低下し、乗組員の生命が危険にさらされる状況であると確信し、直接、技術担当副社長ランドに会い、打ち上げ延期を求めました。このとき、ランドは危険性を理解し、NASAに対して打ち上げ反対を進言する決意をします。シャトルの打ち上げにはモートン=サイオコール社を含むすべての下請け企業の承認が必要だったのです。

 

 夕方、フロリダのケネディ宇宙センター、マーシャル宇宙飛行センターとモートン=サイオコール社を結んで、電話回線を使った遠隔地閉会議が行われました。シールの危険性についての議題から始まったこの会議は、ボイジョリー氏らが提出したデータに基づき、 NASAとMT社双方の意見が交換されました。しかし、ボイジョリー氏らが用意したデータは、いままでの飛行で気温とシールの密閉性に問題があった飛行のみをとりあげ、その不具合数と気温を示したものだったのです。そのため、不具合のない飛行の条件となる気温について、あるいは必ず不具合の起きる条件となる気温について等、全飛行から気温とシールの密閉性を考察ができるものではありませんでした。

 

 結局、O-リングの危険性に気付きながらボイジョリー氏は、自社の上層部や顧客であるNASAを説得できませんでした。その結果、チャレンジャー号は爆発し、7名の宇宙飛行士が命を落とし、シャトル計画は3年間中止されます。

 

 この事故では、NASAの安全に対する考え方が間違いであり、安全の確認よりも飛行計画を重視したことが事故を招いたとされています。確かにそれもありますが、本当にそれだけでしょうか。

 

 実は、NASAの安全に対する考えに間違いがあったとの評価を決定付けたのは、事故調査委員会のメンバーの一人、ノーベル物理学賞受賞者のリチャード ファインマンでした。彼はテレビ放送された聴聞会の席上、氷のように冷たい温度下でOリングが如何に弾力性を失い密閉性を損なわれるかということを、コップの氷水に試料を浸すことで見事に実証してみせました。

 

 彼はNASAの「安全文化」の欠点に対して極めて批判的だったため、シャトルの信頼性に対する彼の個人的な見解を報告書に載せなければ報告書に名前を使わせないと脅し、これは「付録F」として巻末に収録されました。ファインマンはその中で、NASAの首脳部から提出された安全性評価ははなはだしく非現実的であり、現場の技術者による評価とは時に1000倍もかけ離れていると論じています。付録Fの末尾をファインマンは次の文で結んでいます。「技術が成功するためには、体面よりも現実が優先されなければならない、何故なら自然は騙しおおせないからだ」。

 

 カッコイイです、いかにもファインマンらしいですね。でも、NASAだって事故になると分かっていればいくらなんでもチャレンジャー号を飛ばすことはしなかったはずです。「現場と首脳部では安全評価に対して1000倍もかけ離れている」なんてことはいくら何でも言い過ぎです。では、何が悪かったのでしょうか、もう一つの例、シティコープタワーの倒壊危機を避けた例から考えてみましょう。