takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

講師は話の内容が9割-2

 この法則、話で何かを伝えようとする人はこまりますよね。一生懸命考えて話しても、話の内容は7%しか伝わらず、私の服装とか態度とか、話し方とか声の大きさの方が93%も伝わるのですから。でも、本当かな?と思いました。そこで、実験好きのエンジニアである私は、ひとつ思いつきました。ロシア映画かスペイン映画を字幕なしでみて映像と音声だけで映画の内容がどれだけ分かるか試してみよう。2時間頑張りました。「現代の英雄」という2008年に公開されたロシア映画です。

 分かりませんでした、全く、分かりません。93%どころか、5%も伝わりません。しかし、次の日に字幕をオンにして観たら簡単に内容が把握できました。

 そこで、さらに調査しました。メラビアン博士はどうやってこの実験を行ったのか。すると、どこでも耳にするほど有名な法則なのに、肝心の実験方法が分かりません。アメリカのサイトまで調べても分かりません(ご本人の公式サイトがあるんです)。

 やっと分かったのが、平野 喜久(ひらの・よしひさ)氏の「天使と悪魔のビジネス用語辞典」というサイトの解説でした。

「好感」を表す言葉、「こんにちは」、「ありがとう」等3つ

「嫌悪」を表す言葉は「ダメ」、「恐ろしい」等3つ

そして「中立」を表す言葉は「多分」、「本当」等やはり3つ。

(もちろん、英語です)。

 

 これら、9種の言葉を3タイプの声質で録音します。優しい声、怒った声、普通の声です。さらに、3タイプの写真、つまり笑顔、怒った顔、普通の顔を見せながらその音声を聞かせるのです。

 例えば、「ありがとう」(笑顔で)と言うのと「ありがとう」(怒った顔で)を比較します。

また、「ダメ」(笑顔で甘え声)、「ダメ」(怒った顔、怒った声)も比較します。

これを、順繰り繰返し、聴者が話者の感情をどう判断したのかを調べるのです。

 メラビアン博士が行ったのは、表情と声の実験だけでした。身振り手振りや身だしなみといった要素は研修講師が勝手にくっつけたのです。そもそも、この実験は、言葉の内容と表情(もしくは声質)が矛盾している場合、聞き手は言葉と表情のどちらに重きを置くだろうかということを検証するためのものでしかなかったのです。いずれにせよ、文章ではなく単語だけの実験です。しかも話者と聴者は、顔を合わせていないのですから、これをコミュニケーションと主張するのは無理があります。

 この結果に関して、メラビアン博士が慎重な発表をしなかったため、実験結果だけが誤って引用され続けました。そうしたら、いつの間にか「非言語情報の重要性を立証した実験」として喧伝されるようになったのです。数値もきれいに並んでいるし、「3V」の法則なんて覚えやすいですから。