takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

『ガリレオの指』以外、大人向け(高校生以上)科学の本、お薦めはこれです。

 科学関係の本は、ほとんどPDFになっています。数百冊のタイトルを眺めながら時々中身を確認していたら2時間近く掛かってしまいました。少し古い本もありますが、私のお勧めは以下の3冊です。

 

『DNAに魂はあるか―驚異の仮説』フランシス クリック著・中原 英臣訳:講談社 (1995/12刊)

 すでに、20年前の本になってしまいました。本の題名を見たとき「変な題名?」と思ってジュンク堂の池袋店で購入しています。原題は「The Astonishing HypotheSis」、つまり日本語の本ではサブタイトルで使われている「驚異の仮説」です。ゴリゴリのサイエンティストだったクリックが、「魂」なんて言葉を自著のタイトルにするはずはないと思うので、やはりこの本のタイトルは良くありません。知らない人は、オカルト系の本と誤解するかもしれません。

 本の内容は、人間の「意識」はどこにあって、どのような作用が意識を生み出しているのかと言うものです。「魂」ではありません。

 DNA二重螺旋構造の発見者の一人、フランシス クリックは、DNA構造の発見後ノーベル賞を受賞し、それから間もなく研究対象を「脳」に変えました。この本は、晩年のクリックが書いた脳研究の集大成のような本ですが、彼の仮説の正しさは、まだ証明されていません。その辺りは、共同研究者だったクリストフ コッホが2006年に出した「意識の研究・上下巻」でも取上げられています。つまり、研究はまだ続いているのです。どうも「意識」というものは、人間にその姿を簡単には見せてくれないようです。

 クリックは、豊富な事例や研究結果を分かりやすく説明しており、誰が読んでも彼の言いたいことはすぐに分かると思います。古本で簡単に手に入ります、ぜひどうぞ。


ゲーデルエッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版』ダグラス R ホフスタッター著・野崎昭弘、柳瀬尚紀、はやしはじめ訳:白揚社; 20周年記念版 (2005/10刊)

 1985年に出版された、『ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環』の改訂版のような本です。科学とAIと美術を繋げて考えると言う離れ業をエンターテイメント的に表現しています。改訂版と書きましたが、本の内容は全く変更されていません。760頁もある本で本当は何を言いたかったのか、読者から寄せられた質問に著者自ら答える序文が付けられた物です。

 この本の内容を、短く解説するのは難しいのですが、私は、「知能」の本質を解説しようとした本だと思います。その解説に使われているのが、ゲーデルの「不完全性定理」、「エッシャーの絵」、「バッハのカノン」なのです。と、書くと頭の中に???が溢れてしまいますが、上手い説明が思いつきません。図書館にもあると思います、実際に中身を読んで貰った方が早いと思います。

 また、蛇足ですが、この本が最初にでた時、文系の方がよく本の紹介をしていました。


『盲目の時計職人』リチャード ドーキンス著・中島 康裕、遠藤 彰、遠藤 知二、疋田 努訳: 早川書房 (2004/3/24刊)

 著者は、「利己的な遺伝子」で日本でもお馴染みのリチャード ドーキンス氏です。利己的な遺伝子は、学術的な本ですが、この本は一般向け。本書のテーマは、進化は偶然によるものか、否かです。生物のような複雑な物体には設計者がいたのか、それとも「盲目の時計職人」(偶然)が積み重なって作り出したものなのかを徹底的に情熱的に論じています。この本を読むと、ドーキンスに説得される快感のようなものを感じることができます。進化、遺伝を考える上でぜひ読んでおきたい1冊です。


 以上、どの本も理系・文系問わず読める本です。科学好きの高校生ぐらいなら読めます。『ガリレオの指』もそうですが、これらの本は、10年や20年で古くなりません。

 

註:順番は、順位を表している訳ではありません。この中から1冊を選ぶなら『盲目の時計職人』を選ぶと思います。