takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

『永久機関』という永遠の夢あるいは、永遠の嘘ー1

現在ではそれほどではありませんが、熱力学の法則が明確になるまで、永久機関は科学者や技術者の夢でした。

例えば、前回リンクしたエッシャーの絵を単純なイメージにすると、以下のようなものでしょう。一目で「あれ?」と思いますが、エッシャーの絵はこれが巧妙に描かれていると思えばよいのです。

 

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永久機関の定義を簡単に言うと、外部からエネルギーの供給を受けずに仕事を続ける装置です。

中世時代には、もっと単純に外部からエネルギーを供給しなくても永久に運動を続ける装置と考えられていました。しかし、慣性の法則によれば外力が働かない限り物体は等速直線運動を続けます。また、地球だって角運動量保存の法則により46億年も自転と公転を続けています。そのため、単純に運動を続けるのではなく、外に対して仕事を行い続ける装置が永久機関と呼ばれます。

これが実現すればエネルギー問題は一気に解決、石炭も石油も不要です。世界経済は大混乱になるでしょうが、公害問題も解決できるでしょう。ですから、一獲千金を狙う、科学者や技術者は夢中になりました。人生を狂わせた人もいます。

ごく一部の「フリーエネルギー論者(≒永久機関を信じる人)」は、「自分が発明した、永久機関は、石油メジャーの手によって、抹殺された、私も命を落とすところだった」などと語ります。本気だとすれば、病院に行くべきです。金儲けのためだとすれば、許せない人です。

話を戻します。これは、もし本気で調べて書きだせば1冊の本になると思います。技術の歴史が好きな私としては、早く今の本を書き上げて、永久機関についてその歴史を書いてみたいところですが、出してくれる出版社はないでしょう。

現在ではまともな科学者・技術者は永久機関に興味を持ちません。もちろん、私も歴史的な意味以外では永久機関について考えると言うことはありません。

ですから、本や資料も少ないのが実情です。

今、手に入れやすい、まともな本は1冊だけ。「永久運動の夢」 (ちくま学芸文庫) 文庫 です。

永久機関のために1冊の本を読むのは嫌だと言う方は、このブログを読んで下さい。

 

熱力学の法則により、永久機関は作れないことが理論的に分かったのは、19世紀の中頃です。これ意外と遅い気がしませんか?

そのため、18世紀の科学者、技術者は永久機関を開発しようと精力的に研究を行っています。しかし、18世紀の終わりには純粋力学的な方法では実現不可能だということが明らかになりました。(下の絵のような装置です)

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今なら、一目で「こんなもの動く訳けがないだろう」と言うところですが、当時はまじめに考えて真剣に作っていたのです。

逆に、飛行機だって「人が空を飛ぶなんて無理に決まっているだろう!」と言われていたのですから、永久機関だって作れないはずはないと考えた人はいたのです。

しかもです、本人は本気でしょうから、笑いはしませんが、現在の日本でも永久機関を発明したとして、特許申請を行う人がいます。もちろん特許は認められていません。

特許庁のデータでは、1993年から2001年6月の間に35件の出願があったようです。そのうち5件に審査請求がありました。審査請求にはそれほどお金はかかりません。

まともな、弁理士さんは永久機関を取り扱わないと思います。おそらく自分で特許明細を書いて出したのでしょう。

続きます。