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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

夢と終わった高速増殖炉、文殊の知恵は出なかった

科学技術

天然ウランの中には、核分裂しやすいウラン235はわずか0.7%しか含まれていない。現在、国内で使用されている軽水炉では、この0.7%しか存在しないウラン235だけが燃料として使用されている。しかし、資源の量から見たらそのままでは使用できないウラン238は、ウラン235の100倍以上も存在している。であれば、地球上に大量に存在する資源を使った方が良いということになる。

 

高速増殖炉が計画された当初、資源の少ない日本もこれでエネルギー問題から開放されるに違いないと、大々的に宣伝された。1960年代の終わり頃、日本はまだ高度成長のまっただ中だった。

 

高速増殖炉の原理を簡単に説明する。

ウラン238中性子が当たると、核分裂しやすいプルトニウム239に変わるという性質をもっている。また、ウラン235プルトニウム239は中性子が当たって核分裂するとき、当たる中性子の速度が速いほど(つまり高速なほど)新しく飛び出す中性子の数が多くなる性質がある。その増えた中性子を使ってウラン238の核分裂を促進するとどうなるか。2つの性質をうまく使うことで、消費される燃料よりも多くの燃料を生み出すことができるのだ。

現在の軽水炉でもウラン235からプルトニウム239がつくられている。しかし、減速材である水の存在があり、中性子の速度は遅い。そのため、消費されるウラン235と新しく生み出されるプルトニウム239の割合は1より小さい。したがって燃料は増えないのだ。これに対し、高速増殖炉では、その名の通り、高速な中性子で核分裂を起こすため、核分裂によって発生する中性子の数を多くすることができる。

 

そのため、冷却材には水を使用しないでナトリウムが使用する。ナトリウムは、空気中に放置すると空気中の水分と反応して燃え出す危険物である。しかし、原子炉内で使用するのであれば、水に比べて中性子の吸収が少なく、高速増殖炉にはうってつけの冷却材なのである。ナトリウムを使用することで無駄になる中性子の数は減る、その結果、ウラン238からプルトニウム239に変わる割合が約1.3倍になる、つまり消費するよりも多い燃料(プルトニウム239)が生み出されるのだ。

冷却材に使われるナトリウムは、熱を伝えやすく、比重も小さい(0,97で水より軽い)沸騰点も高いから冷却材としては優れた性質を持っている。しかし、反応性の高い物質であり化学的には扱いにくいものでもある

 

以下は、ウィキペディアからの引用だが、海外では高速増殖炉の試験運転は相次いで中止になっている。

 

高速増殖炉は約20年前まで、ウラン燃料の有効利用促進のため米国、フランス、ロシア、イギリス、ドイツ、日本などで積極的な開発が進められてきた。しかし1990年代前半に米国の実験炉FFTFとEBR-Ⅱの運転停止、1991年ドイツの原型炉SNR-300の建設中止、1994年英国の原型炉PFR運転中止、1998年にはフランス実証炉スーパーフェニックスの運転中止などが相次ぎ、日本でも「もんじゅ」のナトリウムもれ火災で運転が中止される。1990年代には高速増殖炉の開発は停止状態となり、フランスを除く欧州各国は高速増殖炉の開発を中止した。

 

日本では、高速増殖炉と言えば「もんじゅ」が有名だが、「もんじゅ」よりも10年早く実験炉として「常陽」が作られ試験運転が行われていた。

「常陽」は1970年に着工、1977年には臨界に達し試験運転を行っていた。しかし、2007年6月に炉内で機器を損傷、現在停止中である。

「もんじゅ」の方は、1980年着工、1994年に臨界に達したが、翌年の95年にはナトリウム漏出火災事故が発生。それから、15年間も停止中だったが、2010年5月6日に万全の体制で運転再開、しかし、たった110日後の2010年8月26日、炉内中継装置をつり上げ作業中に落下させる事故を起こした。日本原子力研究開発機構は2010年10月1日「落下による影響はない」として装置の引き揚げ作業を続行し、同年10月4日(直後に中断)と13日に24回の引き抜き作業を試みるもののいずれも失敗している。しかし、ついにというか、やっとというか、開発機構のサイトによれば、「平成24年8月8日、炉内中継装置の落下に係る復旧が完了しました。」とのこと。

 

どうも原子力の「仏」頼みは上手く行かないようだ。