takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

岡山県倉敷の水島製油所における海底トンネル崩落事故

2012年2月7日午後0時半ごろ、岡山県倉敷市水島コンビナート内にあるJX日鉱日石エネルギー水島製油所における海底トンネル工事の現場にて、「作業中に水が噴き出した」と119番通報があった。

この工事は、水島港の西側にある旧新日本石油精製の「A工場」と、東側にある旧ジャパンエナジーの「B工場」の2つの石油精製工場間をつなぎ、石油製品類を融通し合う790mの海底パイプラインをシールドトンネルで築造する「第2パイプライン防護設備建設工事」であり、大手ゼネコンの鹿島建設が受注していた。工期は、2010年8月から2013年6月まで。泥土圧式シールド工法で、外径は4.95mだった。土質はN値50以上の硬い礫であり、土被り(地表面からトンネル天井までの高さ)の高さは4.95m深さは-24.5mだった。水島港湾区域で工事をするときには、港湾法に基づいて 備中県民局水島港湾事務所への届け出が必要であり、今回の工事の場合は、JXが2011年2月9日に海底にパイプラインを通す工事として構造図などを申請し4月1日に許可がおりていた。

事故当時は、弘新建設と弘栄建技に勤める30歳代から60歳代のシールド工の作業員、計6人が作業をしていた。このうち、61歳の作業員の1人はB工場側の入り口で作業をしていた時に、「危ない、逃げろ」という声を聞き、立坑に設けられている階段を上がって自ら脱出した。後に、この作業員は、消防などに「トンネルから水があふれてきた」と語っている。残る5人の作業員が行方不明で、事故当時、3人はトンネル内にいて、その内、2人はB工場の立て坑から約140メートル付近におり、立坑付近には残る2人がいた。

鹿島は水島製油所B工場にて2月7日17時半から、50人の報道陣が集まり2時間に渡って会見を行い、鹿島・水島海底シールド事務所の所長である竹下一敏は、「関係各位の皆様にご迷惑をかけ、本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した上で、事故の原因について、トンネル内の水が濁っていて詳しい調査ができず、「どうして水が出たのかに関しては、原因は確定できない」と内部で何が起きたか分からないとした上で、「原因としては2つ考えられ、水を排出する排出口から水が入ったのか、トンネルが途中で崩落したのかだが、現段階ではどちらか分からない」と語った。さらに、「想定外の異常出水だった」と説明し、その上で、「10年前に地質調査を行っていて、地盤に問題はなかった」としている。さらに、鹿島によると、坑内に流入した海水は少なくとも約6000トン。それが、わずか数分間で坑内を満たし一気に地上へあふれ出て、猛スピードで横坑から立て坑に押し寄せた。

ここまでは、ウィキペディアから省略して転載している。////

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上の図は、朝日新聞の記事から転載している

去年の事故であり、記憶されている方は多いと思う。犠牲になったかたは、30代から60代の作業員5名である。6000トンの水と言うとピントこないかも知れないが、50メートル×30メートルのプールで深さが2メートルあれば6000トンの水量になる。その水が僅か数分でトンネル内を満たしてしまった。助かった方は、上図の右、B工場側の縦穴下部で作業をしていたらしい。

今月5日の産経新聞には、こんな記事があった。(以下は、産経新聞の記事)

海底トンネル事故から1年 現場写真公開

2013.2.5 21:20

 作業員5人が死亡した岡山県倉敷市のJX日鉱日石エネルギー水島製油所の海底トンネル事故から7日で発生1年になるのを前に、工事元請けの鹿島は5日、現在の現場写真を公開した。

 現場は立て坑(高さ約40メートル)と横抗(長さ約160メートル)のL字構造。事故は横坑の先端部で壁面が崩落し、海水が流入したとみられる。公開された写真は、特殊剤を注入して横坑内部を固めるため、立て坑底部に置かれた機械が撮影されている。現在の注入状況は約7割という。

 すでに立て抗内からは土砂や海水がくみ出されており、鹿島は特殊剤が固まる4月にも、横坑内に埋もれたままの大型掘削機(シールドマシン)の引き揚げ作業などに入り、9月下旬までに終了したいとしている。

///// ここまで /////

事故の原因に関しては、諸説があるらしい。その中の有力説は、セグメントと呼ばれるトンネル内部を構成する壁の厚み不足、加えて幅の増加と言う物である。セグメントは掘り進む毎に並べて行くものだから、幅が広がれば進む速度は速くなる。また、厚みは薄くすることで安くすることができる。上図の上側に描いてある完成済みの第一トンネルの時は、225ミリ厚で幅は1200ミリのセグメントであった。しかし、今回、用いられたセグメントは、160ミリ厚で幅は1400ミリである。地質は同じだったと言うのであれば、何故セグメントも同じにしなかったのか。工費を安くするために、安全を犠牲にしたのであろうか。もっとも、事故直後は、これとは異なる原因が挙げられており、ネット上の記事だけで工事担当側を責める訳にはいかない。ただ、現在も他の場所でトンネル工事は行われている訳であり、同じシールド工法を行っている現場の方にとっては他人事では済まない。事故の原因調査と結果の公表は、しっかり行って欲しい。