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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

小さな命を奪った、六本木ヒルズの回転ドア

2004年(平成16年)03月26日午前11時30分頃、東京都港区六本木の大型複合施設「六本木ヒルズ」内の森タワー二階正面入口で、母親と観光に訪れていた6歳男児が三和タジマ製の大型自動回転ドアに挟まれて死亡した。男児は母親より先に森タワーに入ろうと小走りで正面入口の三和タジマ製の大型自動回転ドアに入りかけ、回転するドアとドア枠に頭部を挟まれた。回転ドアの重量が重く、停止動作開始後に停止するまでに時間がかかること、および男児がセンサの死角に入り緊急停止が働かなかったことが主な原因である。

後からきた母親と近くにいた人たちが、ドアを逆回転させて助け出したが、すでに男児の意識はなかったという。その後病院に搬送されたが、約2時間後に死亡した。

事故当時は男児の反対側のスペースに人がいたため、ドアは3.2回転/分、周速にすると約80cm/秒の速度で回転していた。この回転速度はより多くの人の出入りを可能にするための処置で、本回転ドアの最高速度であった。また、天井のセンサは、同様の理由で感知距離を1.6mからさらに40cm短くしていた。

事故後、刑事訴訟で森ビル側の管理過失および三和タジマの製品製作上の過失が認定された。 

 

原因

 

1.回転ドアの回転部が重すぎた

回転ドアは回転部の重量が増すほど、回転の慣性力が大きくなり、挟まれたときの危険度が増す。本回転ドアのオリジナルのブーンイダム社(オランダ)の回転部の重量は1トン以下であった。それが3倍近い2.7トンの重量となっていた。このオリジナルからの危険性の増大について、ドアメーカ、ユーザ(ビルオーナー)、ビル建設会社ともに気付いていなかった。

2.センサーに死角があった

ドア天井のセンサーの感知距離の設定が地上から約120cmに対して、男児の身長が117cmであり死角に入ってしまった。またドア枠には地上15cmの位置に真横に赤外線センサも設置されていたが、頭から男児が駆け込んだため、足を感知しなかったと推定される。

3.制御安全への過信

危険をセンサで感知して緊急停止させる「制御安全」に頼る設計となっていた。しかし、事故当時回転速度が最速に設定されていたため、実際にはセンサで緊急停止がかかっても、慣性力で完全に停止するまでには25cmも動くようになっていた。

4.安全管理の欠如

森タワーが2003年4月25日にオープンしてからこの事故までの1年弱の間に、大型回転ドア12件、小型回転ドア10件の事故が発生していた。しかも大型回転ドアのうち7件はいずれも8歳以下の子供が体を挟まれたもので今回と類似の事故であったが、駆け込みを防止するための簡易ポールを立てるなどの簡便な対応で終わっていた。 

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

技術者倫理の本にも良く紹介される事故例である。あれから、9年も経つのかと言う思いがする。この事故から、全国で大型の回転ドア数が明らかに減った。

ドアには、「10ジュールの法則」と呼ばれる暗黙知がある。作用する力が10ジュール以下なら安全というものである。しかし、大型回転ドアのエネルギーは凄まじく、10ジュールなど言う物ではない。事故を起こしたドアの場合は、2.7トンのドアが外周速80cm/秒で回転していた。子供がはさまれた最外周では、約8000ニュートン(800キロ)の力が作用しエネルギー換算では8000ジュールになる。これは、子供ではなくとも人間の体が破壊される力である。

この事故の際、ネット上では子供の手を離した母親を非難する声があったと聞いた。しかし、それは間違いだ。ドアに挟まれただけで、死に至ることになると普通の人は考えない。考えるわけがない。加えて、この事故から遡り、1年弱の間で32件も人が挟まれる事故が発生しているのである。事故の対策を本気で考え、現場を確認する管理者や技術者がいれば十分に防止できた事故だと思う。何しろ、ヒルズ側が行った対策は、ビニールテープを張って「危険」と注意をしただけである。

また、何かが挟まれば停止するはずの安全制御装置は、信号が入ってから停止するまで20センチも動くものであり、2.7トンのギロチンが20センチ動いたら大人でも怪我をするだろう。

回転ドア自体は、まだ未成熟な新しい機構である。そのため、六本木ヒルズに限らず全国で事故が起きている。この事故を契機に全国の回転ドア(特に大型のもの)が撤去されたのは良いことだと思っている。実を言うと、私自身、池袋駅前のホテルにあった回転ドアに挟まれたことがある。よそ見をしていた、私が悪いのだがその時も回転ドアは危ないものだと思った。そのホテルは、六本木ヒルズの事故後、すぐに回転ドアを撤去している。