takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

倫理問題を考えよう:冷たい方程式

『冷たい方程式』は、トム ゴドウィンによって1954年に「アスタウンディング・サイエンスフィクション」に発表された短編SF小説です。SF小説史上もっとも注目に値する作品のひとつと評価する人もいます。 しかし、小説としてはそれほどのものとは思えません。後述しますが、至るところに無理があります。
 小説のあらすじは、以下のようなお話です。 短い話しですが、Wikiの文章を参考に書き直しました。

  

 惑星・ウォードンを調査していた研究チームの1つで致死性の疫病が発生します。そのチームを助けるため1機の宇宙船がウォードンにワクチンを持って向かうことになります。物語は、惑星に血清を届ける小型宇宙船の中で発生します。

 この宇宙船には、燃料も酸素も、最小限の量しか積まれていませんでした(工学的には、あり得ませんが冗長性ゼロ)。発進後すぐに、宇宙船のパイロットは船内に隠れていた密航者を発見します。規則に従うならば、密航者はエアロックから真空の船外へ放り出されなければなりません。この密航者は、惑星で調査の任に携わっている兄(疫病には罹患していない)に会うために宇宙船に乗り込んだのでした。密航者は、18歳の少女です。小学生ではありません。しかし、彼女は罰金を払う程度の罰で済むと思っていたのです(これも、無理があります)。

 パイロットは、燃料はぎりぎりしか積まれておらず、彼女がいるままでは安全に惑星に着陸出来ないばかりではなく、血清を待つ6人の命までも死に至らしめることになることを説明します。パイロットは彼女を宇宙船の外へ放棄するのを遅らせるために最善を尽くして、時間を稼ぎます。その間に彼女は、両親とウォードンにいる兄へ手紙を書き、兄と無線で会話を交わします。無線が途切れた後、彼女は船外へ放棄されるために、自らエアロックの中へ入ります。

 

 その後のことは、直接言及されていませんが、少女が宇宙に放棄されたことは間違いありません。

 確かに考えさせられる問題です。しかし、この小説は密航者が18歳の綺麗な女性だったからです。汚い浮浪者が乗り込んでいたのなら、これほど有名な作品にならなかったでしょう。それと、18歳の女性にしては考え方が幼すぎます。読み応えがあるのは、彼女の心の変化でしょう。

 銀河系の星間でワクチンを運ぶ緊急発進小艇(EDS)が目的地に向かっていましたが、計器に密航者の存在を示す異常が発生します。星間法規には「EDS内で発見された密航者は、発見と同時にただちに艇外に遺棄する」とあります。つまり、命よりも重要な法律なのです。

 ようするに、緊急発進小艇が宇宙空間を飛行するのは、物理学上の理論にもとづくことであり、法律はそれに従っているに過ぎないのです。人の命を処分してでも守らなければならない決り。だから、冷たい方程式なのでしょう。方程式は、物理学の理論を象徴しています。

 続きは明日。