takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

再生可能エネルギーを考える・2

昨日に続いて再生可能エネルギーについての個人的見解を述べる。

 

再生可能エネルギーの殆どは、太陽エネルギーに由来する。太陽光、太陽熱発電は無論のこと、風力も元を質せば太陽エネルギーと言って良い。また、水力も揚力発電は別だが、水を大気中に蒸発させ、雨として高い位置に移動させているのは太陽の熱エネルギーだから太陽エネルギーの変則的な利用である。

しかし、今回取り上げる、地熱エネルギーは太陽に由来しない自然エネルギーであり、また、そのポテンシャルも比較的大きい。

 

先ずは、その方式による違いを分類する。

地熱発電には、大きく分けて3つの方式がある。

 

1. ドライスチーム方式

地面に穴を開け、地中の水分を蒸気として取り出す。その蒸気が熱水をあまり含んでいなければ簡単な湿分除去のみ行ってそのまま蒸気タービンに送りタービンを廻す方式。日本国内では、ほとんど使われていない方式である。

 

2. フラッシュサイクル方式

上記、ドライスチームと異なり、得られた蒸気中に熱水成分が多い場合はこの方式で発電する。汽水分離器で蒸気のみを取り分けてから、蒸気をタービンに送る。その際、単純に蒸気を送るだけの方式をシングル・フラッシュサイクルという。日本の地熱発電所では主流の方式である。

一方、設備は複雑になるが、除去した熱水を減圧し、そこで得られた蒸気を追加で投入する方式をダブル・フラッシュサイクルと言う。熱効率は上がるが設備にお金が掛かる、日本では八丁原発電所及び森発電所で採用されている。

 

3. バイナリーサイクル

地下の温度や圧力が低いため地熱発電を行うことが不可能な場合、アンモニアやペンタン・フロンなど水よりも低沸点の熱媒体(これを低沸点流体という)を、地下の熱源で沸騰させタービンを回して発電させることができる。これをバイナリー発電(binary cycle)という。この方式の地熱発電は日本国内には無いと思う。

 

4. 現在の問題点

法律上の問題、温泉との競合問題除き、技術的な面だけの問題を取り上げると解決の難しい問題は2つある。

1つ目は、どの方式で発電しても配管の腐食・劣化問題が挙げられている。火山地帯では、地下に硫黄や塩素を含むことが多く、蒸気にはこれら腐食成分が多く含まれている。金やプラチナを配管に使用することはできないから、ステンレスを使用しているが、流石のステンレスも長期間の使用には耐えられないようだ。

 

2つ目、長期間の使用により出力の低下も見られる。日本国内ほぼ全ての地熱発電所では出力を維持するために、平均して 3.1年に 1 本の頻度で補填井戸を掘削している。2012年のエネルギー白書をみると1997年の37.57億kWhをピークに2010年には26.32億kWhと30%低下している。沢山、掘削すれば出力の低下はある程度防ぐことはできるが、費用と環境への負荷の問題が発生する。

 

5. 現在の発電力

日本国内で地熱発電によって生産されている電力の出力は約51万キロワット。2010年(平成22年)段階で世界第8位である。1年は8760時間、設備稼働率は60%程度らしいから総出力は51万×8760(時間)×0.6で26億8千万kWhとなり、エネルギー白書の数値と一致する。まあ、中型の火力発電基1基分程度である。

正直、設備に掛る費用を考えるとあまり良いものではない。

 

6. 今後の見通し

高温岩体発電と呼ばれる地熱発電の方式がある。

通常の地熱発電は、地下に滞留している熱水を利用して発電を行う。しかし、そのため温泉街から温泉資源の枯渇が叫ばれ地熱発電所を増やすことができない。そこで、高温岩体発電は地下に存在する高温の岩が持つ熱エネルギーだけを利用する。

要するに、地面を掘削し、穴を開けたらそこから高圧の水を注入する。水の力で岩体を破砕し少し離れたところから高温となった蒸気や熱水を取り出すというものである。技術的には、今話題のシェールガスの掘削方法と似ている。

高温岩体発電は、1992年、日本が世界に先駆け実験運用を成功させた。圧入した水の80%は回収できたらしい。実験は、2003年に一度終了しているが、電力中央研究所では今後も引き続き研究が必要としている。

オーストラリアでは、75,000Kw規模の発電所を建設しているらしいが、詳しいことはまだ分からない。

また、地震の誘発を心配している人もいる。しかし、掘削井戸は深くても1,000m、通常は500~700mであり、地震の震源はどんなに浅くても3,000mはある。これは、心配し過ぎだと思う。もっとも、3・11の時だって、海洋掘削船「ちきゅう」の人工地震が原因だと言って抗議の電話を掛けた人がいるらしいから、まあ、心配性の人には頭痛の種が増えることになるかもしれない。

個人的には、良い方法だと思う。しかし、まだ開発段階であり環境影響などもこれから解明されるはずである。実用には数十年掛かると思う。