takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

1㎏の重さはどれくらいですか?

お米の重さが気になる方は?

スーパーマーケットでお米を買うとします。このとき、「5kg」「10kg」「20kg」と内容量が書いてあるはずです。現代社会に生きる私たちは、このパッケージに書かれた商品の重さが正しいかどうかを気にかけることはめったにないと思います。これは、近所のお店から世界中の科学の実験室に至るまで、はかりの日盛りを正確に調整するシステムが存在しているからです。

さまざまな物理量の正確な基準を維持すること、すなわち単位を決めることは、伝統的に政府の責任でおこなわれてきました。そして、このことは、今日でも重要な科学的事業の一つとなっています。

前回は、キログラム原器の話でした

前回、私は毎日新聞の記事からキログラム原器のことを簡単に説明しましたが、歴史を覗いてみると昔は、この1㎏を世界中どこでも同じ1㎏に揃えることは容易なことではなかったと言うことが分ります。

古代バビロニアまで遡ります

記録に残る最初の基準は、古代バビロニアの「ミナ」と言う重量単位です。
現在で言うと「1ミナ」はおよそ700グラムに等しい重さです。その基準にアヒルの彫刻(5ミナ)と白鳥の彫刻(10ミナ)を作って配布したようです。
商品の重さを計るときに天秤のおもりとして使いました。

これどう考えても5ミナと10ミナだけでは不便だったろうと思います。せめて、1,3,5,7,10ぐらいあれば便利に使えたのではないでしょうか?
その場合、すずめ、ムクドリ、アヒル、タカ?、白鳥でしょうか。

政府や王が決めていた様々な単位

話を戻します。
政府が重さ、長さ、その他もろもろの基準を定め、その政府の管轄範囲にいる者はすべて、その基準に従わなければならないのは今も昔も変わりません。

マグナカルタの中でイギリスのジョン王は、「王国全土に通用するワイン、とうもろこし、およびビールの計量の基準がなくてはならない」ということに同意しています。中世シャンパーニュの大見本市の役人は、鉄の棒を用意し、市で売られる反物はすべてその棒と同じ幅でなければならないと命令しました。
歴史上の記録を見ていると、それぞれの国がさまざまな目的のためにさまざまな基準を定めてきたというのが実情であります。たとえば、アメリカでは、土地はエーカー、穀物はブッシェル、高さはフィートとインチで計ります。
『化学。物理ハンドブック』によれば、酒から石油までのいろいろな液体の容積をはかるのに、同じ「バレル」という名前でよばれる18種類もの異なる単位があります。日本では1バレルと言えば原油の量で約160リットルと覚えている方も多いと思います。しかし、実際には18種類のバレルがあり、なんとクランベリーをはかるためだけに使われるバレルという単位さえあります。

メートル原器とキログラム原器

私が思うに、1875年に先進工業国がメートル条約にサインしたのは、こつした類の混乱から逃れるためだったと思います。
この協定によると、「キログラム原器」と「メートル原器」はパリ近郊の国際度量衡局に保管され、二次基準は、各国の首都に置かれることになっていました。
1885年日本がメートル条約に加入すると、1890年にフランスから「日本国メートル原器」(No.22)、「日本国キログラム原器」(No.6)が到着しました。中央度量衡器検定所(現・産業技術総合研究所)で保管され、これを日本の長さの基準にしたのです。

メートルは、プラチナとイリジウムの合金の棒につけられた二つのしるしのあいだの距離であり、キログラムは、同じ材料でできた特殊な円筒の質量でした。
しかし、これらの単純で、直観的にわかりやすい基準を設置したものの、科学技術の進歩によって、それらの基準はすたれてしまったのです。メートル原器がパリの地下金庫の中にあること自体は結構なことです。しかし、だれでも同じように基準を利用できたとしたら、もっとずっと便利であることは間違いありません。

このように、最近の傾向としては、メートル条約で成文化された一種の中央集権的な単位の基準をやめて、本当に普遍的なものにもとづく基準を使うようになってきています。すなわち、原子の示す物性を用いるようになっているのです。原子時計の発展はそうした動きの一例です。正確な1秒を刻むことに人は苦心してきました。
原子時計の話はそれだけで何回分も書けるくらい色々な逸話があります。

(興味のあるかたは以下の本をどうぞ、翻訳の文章は少しアレです。)

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もう一度、話を戻します。

メートル原器と異なりキログラムの基準は、長らく「重り」をそのまま使っていました。それが、今回初めて物理量に置き換えられてキログラム原器は、めでたく離ればなれになっていたメートル原器と再会することになりました。
織り姫と彦星のようです。

関連画像

キログラム原器。