takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

生きているもの(生物)-7

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 いきなり、解剖学的な図を出しました。皆さんも一つは持っているのですから、あまり驚かないで下さい。こう言った図を極端に嫌う人もいます。それは知っていますので、気分を悪くされた方がいたら申し訳ありません。

 人間の脳は、損傷を受けるとその場所によって様々な障害が出てきます。損傷を受けた箇所がウェルニッケ野(や)だったり、ブローカ野(や)だったりすると、それぞれウェルニッケ失語症やブローカ失語症になります。このうち、ブローカ失語症の方は文法にひどい困難が生じます。ところがウェルニッケ失語症の方は、能弁な失語症と言われることもあって、ほとんど意味はないのですが文法に合っている文を作り出します。言い換えると、同じ言語の器官であっても受け持っている機能は異なると言うことです。

註:失語症には、何十もの種類がありその症状は複雑です。上の二つが代表的な失語症という訳ではありません。

 

ジョン M スミスは、こう語ります。

 脳の損傷に伴う現象のうちには、とまどわせるばかりか、一見逆説的にみえるものもある。たとえば患者が次のように訴えることもあるのだ。「このものが私には見える。それが何であるかもわかる。しかしその名前を言うことができない」。

 ここから、概念を作ることと、それと結びついている語を探し出すことと、語と概念の聞につながりをつける働きが、脳のそれぞれ別個の部分に局在していることがわかる。それ以上の局在も見いだされてきた。脳のある領域は動詞を貯え、他の領域は名詞を貯えるというふうで、さらに生きた対象と生きていない対象を指す名詞の扱い方に神経学的な違いさえあるように見えるのだ。

  損傷を受けた場所の違いによって発症する障害がことなると言うことは、言語を習得するための回路は生まれつき頭の中に組み込まれているということを示唆(しさ)しています。今のところ、人間以外の動物には、ウェルニッケ野もブローカ野も見つかっていません。ただし、犬が自分の名前を呼ばれると反応するように、音声信号を理解する回路は持っているはずです。犬は自分が「シロ」であると、自己認識しているのではありません。「シロ」と言う音で主人に呼ばれた時に反応するのです。

 また、脳の神経器官が発達するためには、生まれてからある年齢に達するまで外部からの信号によって刺激を受けることも必要です。それが、ないとその部分の神経は発達しないのです。次回は、その臨界期についてご説明します。ただ、ごく最近の研究では、臨界期説は間違いではないかという発表もあります(少数です)。

続きます。