エンジニアは、哲学の夢に魘(うな)される
会社の業務、本の原稿などでブログが滞ってしまいました。「安全な社会」は、9回で一度切り上げます。
テレビや新聞であまり取り上げられなかったため、文部科学省の発表に気がつきませんでした。内容は以下のようなものです。
「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」について(案)
【趣旨】
文部科学大臣は、中期目標期間終了時に組織及び業務全般にわたる検討を行い、評価委員会の意見を聴いた上で、所要の措置を講ずるものとされている。(準用通則法第35条)
これに先立って、事前に国立大学法人評価委員会が有する課題意識を「組織及び業務全般の見直しに関する視点」として、各法人に示すことにより、各法人における自主的な組織及び業務全般の見直しの検討を促すことを目的。【主な内容】
◇見直しの基本的な方向性
・強み、特色、社会的役割を踏まえた機能の一層の明確化
・定量的な指標の設定など、具体的かつ検証可能な中期目標・計画の策定
・高い到達目標など、意欲的な中期目標・計画の設定に努力◇組織の見直しに関する視点
・「ミッションの再定義」を踏まえた組織改革
・教員養成系、人文社会科学系は、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換
・法科大学院の抜本的な見直し
・柔軟かつ機動的な組織編成を可能とする組織体制の確立◇業務全般の見直しに関する視点
(1)教育研究等の質の向上
・学生の主体的な学びを促す教育の質的転換
・社会貢献・地域貢献の一層の推進
・人材・システムのグローバル化の推進
・イノベーション創出(大学発ベンチャー支援)
・入学者選抜の改善
(2)業務運営の改善等
・ガバナンス機能の強化
・人事給与システム改革
・研究における不正行為、研究費の不正使用の防止
(強調は匠)
まさか、本当に全廃することはないと思いますが、人文社会科学、教育学部を国立大学から廃止するなど暴挙です。まるで、社会の安全装置を外すようなものです。
私は、弊ブログの中で何度か哲学を批判的に書いてきました。しかし、哲学や文学を無駄だと思ったことは一度もありません。むしろ、科学技術に先行する領域として哲学や文学にしっかりして欲しいと思っています(偉そうに言っていますが、そんなつもりはありません)。
どれだけ、科学技術が発達しても危機的状況を常に予測することは不可能です。ですから、エンジニアは、知り得る物は何かを考えながら業務を進めなければなりません。その中で哲学は、科学技術をより大きな文脈の中でとらえテクノロジーの暴走を制御する必要があると思います。言い換えると、安全で安心して暮らせる社会を作るのは科学技術だとして、その中で人間はどう生きるのかを考えるのが哲学や文学だと思います。
もちろん、国立大学から社会人文科学系の学部がなくなったって私立大学がそれに変わればよいのかもしれません。しかし、国が大学教育の方向としてそのような姿勢を見せるのは間違いです。何の力にもなりませんが、私は反対します。