takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

台風の被害を大きくする高潮

 今回の台風でも高潮のことが何度も言われています。高潮は、津波や高波とは発生原因がことなります。簡単に言えば、海面は普段1気圧の空気の重さで押されています。それが台風の接近で低気圧になると、海面を押す空気の重さが少なくなります。海面側から見れば押されていた力が弱まるわけですから、その分海面は上昇します。大雑把に1hPa下がるごとに海面は1センチ上昇します。今回の台風は950hPaぐらいのようですから、海面は普段よりも50センチ上昇すると考えて下さい。これに、潮の満ち引きによる海面の上昇が加わると、海面はより上昇することになります(相殺されることもありあます)。

 昨日書いた、伊勢湾台風の被害を大きくしたのは、この高潮と満ち潮の相互作用による海面の上昇でした。この時は、およそ4メートルもの高潮が名古屋市から四日市の沿岸部を襲いました。発生した現象だけを見れば津波に襲われたのと変わりはありません。津波は、地震が原因ですが、高潮は台風を元にした「津波」と考えても良いでしょう(学術的には正しくありません)。要するに被害は同じです、高潮は決してバカにできません、津波と異なるのは規模の予測が容易であることだけです。

 台風に吹き込む風は反時計回りです。ですから、ふつうは進行方向に対して右側で風が強くなります。そのため、南に開いた湾では台風が西側を北上した場合には南風が吹き続け高潮が起こります。さらに強風によって発生した「吹き寄せ効果」による高い波も沖から押し寄せますから、高潮に高波が加わって海面は一層高くなります。過去50年間に潮位偏差が1m以上となった高潮はほとんどが東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、有明海の遠浅で南に開いた湾で発生しています。これらの湾に面したところに住む人は台風の時は注意した方が良いでしょう。

 特に、東京は東京湾の性質上地震による津波被害はほとんど無いのですが、高潮による大きな被害を被ったことはあります。大正6年(1917年)9月30日に発生した高潮水害で、被害地域では大正六年の大津波の名で伝えられていますが。これは津波ではありません。

 詳しくは、千葉県のホームページをご覧下さい。

 ちなみに、2006年にアメリカ南部を襲ったハリケーンカトリーヌは、6メートルもの潮位高さを記録しています。フロリダ沿岸は、日本よりも遙かに広い遠浅の海に面しているため高潮被害は発生しやすいようです。