takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

品川勝島倉庫爆発火災事故、消防関係者だけが19名も犠牲になった

事例概要

1.

1964年(昭和39年)7月14日21時55分頃、首都高速道路羽横線沿いの可燃物や火薬などを保管している倉庫で大爆発があった。倉庫地区に野積みされていたドラム缶入り硝化綿が自然発火して火災となり、地区内に野積みされていた他の硝化綿やアセトン、アルコール類並びに倉庫に延焼した。消火活動中に延焼した倉庫に貯蔵されていたメチルエチルケトンペルオキシドが発火爆発した。爆発により2階建て倉庫が倒壊し、近くで消火活動をしていた消防士、消防団員19名が死亡した。さらに消防隊、警察官、取材中の記者等多数が重軽傷を負った。

2.

出火原因は硝化綿の自然発火である。ドラム缶入りの湿硝化綿が直射日光の当たる場所で野積みされていたため、部分的に乾燥状態となって自然発火したものと推定されている。出火場所付近に大量の引火性物質が保管されていたため、火災が拡大した。二次災害で多くの死傷者が生じた。

基本原因は当事者の危険物に対する認識の甘さである。

 

 

経過

1.

1964年7月14日21時55分頃、倉庫地域の空地に野積みされていたドラム缶入り硝化綿が自然発火して火災となり、近くに野済みされていた硝化綿やアセトン、アルコール類等の引火性液体に燃え広がり、これらの容器が小爆発を繰り返した。

2.

近くの社宅にいた従業員などが手引動力ポンプで初期消火を試みたが、対応できるものではなかった。

3.

火災を覚知した公設消防が出動し、消火活動をしたが、倉庫群に延焼し、倉庫内の石油缶やラッカー等の容器が小爆発を繰り返して燃焼するため消火活動が難しく、火勢はなかなか衰えなかった。

4.

ようやく火勢が衰えかけた22時56分頃に、延焼した倉庫内に貯蔵されていたメチルエチルケトンペルオキシド約2200kgが一挙に爆発し、当該倉庫と隣接倉庫2棟が吹き飛ばされた。

そのため近くで消火活動をしていた消防士18名と消防団員1名が飛散物の下敷きとなり、死亡した。他の隊員も飛散物や降り注ぐ火の粉等で負傷した。

5.

爆発による火の粉や飛散物の飛来が一段落すると、消防活動の再開と負傷者の救援活動を行った。

6.

翌15日1時38分に鎮火した。

 

原因

1.

出火原因は硝化綿の自然発火である。硝化綿は自然発火を防止するためにアルコールを含ませた湿綿薬として保管しているが、直射日光の当たる場所で野積みされていたため、部分的に乾燥状態となって自然発火したものと推定されている。

2.

出火場所付近に大量の引火性物質が保管されていたため、火災が拡大した。

3.

爆発危険性を有する有機過酸化物が大量に保管されていたため、二次災害で多くの死傷者が生じた。

 

 

背景

基本原因は当事者の危険物に対する認識の甘さである。

1.

倉庫会社の経営者や従業員の危険物に対する認識の甘さがあり、指定数量をはるかに超える量の危険物を無許可で保管するなど危険物のずさんな保管が常態化していた。

2.

存置されている危険物の危険性についての情報が消防に伝わっていなかった。

 

後日談

この事故がきっかけとなり、消防関係法令の改正が行われ、行政措置権の強化、火災現場の情報収集の強化が盛り込まれた。

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

危険物は、危険物であるがゆえに遵守すべきルールがある。しかもそのルールは最低限の規制であり、法令を守れば安全という訳にはいかない。ほとんどの化学物質は保管方法を間違えると予想外の変化がおこり、不安定で危険な状態になることが多い。

また、消火方法もそれぞれの物質に適した方法があり、何が燃えているかを連絡するのは管理者の義務である。MEKPO(メチル エチル ケトン パーオーキサイト)が大量に保管されていると知っていたら、これほどの人的被害は発生しなかったのではないかと思う。

19名の死亡者は全て消防関係者であり、117名(158名説もある)の負傷者も92名は消防関係者であり、他には警察、報道関係者となっている。

物的被害は、15棟の倉庫が全焼、2棟が半焼、8棟が部分的な火災である。火災損害額は1964年当時で55億円(当時の大卒初任給は、平均21,190円、地方公務員の平均給与は31,329円)。

MEKPOは、プラスチックの硬化剤に使用される自己反応物質である。危険物の分類としては第5類とされている。英語で書くと「methyl ethyl ketone peroxide」(メチル エチル ケトン パーオーキサイト)とか(メチル エチル ケトン ペルオキシド)とか呼ばれている。本当の発音は知らない。非常に反応性が強く、また、不安定な物質であり、50年近く昔とはいえよくこんな物を野積みでドラム缶に入れておいたものだと思う。現在の規制では、風通しの良い冷暗なところへ保管することになっている。最も、法律を守らないから、上記のような事故が発生するとも言えるから、危険物を取り扱っているという認識の無い人にはどんな規制も無力である。