takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

偽物の恐怖が本当の恐怖になった、エキスポランドの事故

事例概要

2007年(平成19年)5月05日、ゴールデンウィークの午後、千里万博公園エキスポランド」のジェットコースター「風神雷神Ⅱ」で、ジェットコースターの車輪が突然レールから脱輪し、車体が傾き、搭乗者1名が車両と左側の鉄柵に頭を挟まれて死亡、負傷者21名の犠牲者を出した。車輪を支える軸のねじ部が疲労破壊で切断したため、車輪がレールから脱輪したことが原因である。

 

経過

2007年1月30 日、千里万博公園の遊園地「エキスポランド」で実施されたジェットコースターの定期検査は、目視で行われ全ての検査項目が「A(指摘なし又は良好)」として、吹田市(特定行政庁)に報告されていた。

ゴールデンウイーク中の5月5日、立ち乗りのジェットコースター「風神雷神Ⅱ」は、6両編成の「風神」および「雷神」が交互に運行されていた。

12時50分頃、「風神」は乗客22 名を乗せてレール上を走行していた。

「風神」は、終点手前の約300m付近で突然6両編成の2両目がレールから脱輪し、車体が左側に大きく傾き、搭乗者が車体とレール左側の鉄柵に頭を挟まれて死亡した。また、他の乗客21名も負傷した。

一方、地上で事故を目撃した入場客ら13名も、気分を悪くして病院へ搬送された。

 

原因

1.車輪が脱輪した原因

左側の車輪を支える車軸ブロックの軸が折断した(図3図4図5)。

2.軸折断の原因

1)軸を固定するナットの締結不十分に起因するねじ部の疲労破壊により切断した。疲労破面が全破面の70%以上を占め最終破断面が小さいことから、疲労破壊の原因となる繰り返し応力は低い(図6図7図8)。

2)1月30日に定期検査を行ったが目視で行われ、本来行われるべきJIS検査基準である軸の探傷試験は実施しなかった。そしてすべての検査項目が「A(指摘なし又は良好)」として、吹田市(特定行政庁)に報告されていた。

3)定期検査の際に実施する分解点検は、5月15日に先送りされていた。

4)検査がのぞき窓からの作業となるため確認が不十分となった。

3.ナット締結不十分の原因

1)ジェットコースターは遊具であっても乗物である。そして運行(機械の運動)に伴う経時変化への対応は不可欠である。それにも拘わらず危険の存在を軽視し、定期検査報告制度などが形骸化していた。

事故後に「雷神」を調査したところ、「風神」の軸切断と同じ箇所に目視で確認できる亀裂が発見された。いずれ同様の事故が起こる危険な状態であった。

2)軸がテーパーとなっている構造では、いつかはナットにゆるみが生じてしまう。

 

後日談

エキスポランドの入園者は、1996年の220万人をピークに減少し、ここ数年は100万人前後で推移していた。

同園では、この脱線事故を受けて休園、事故の約3ヶ月後に営業を再開するが、事故によるイメージダウンが大きく、来園者が事故前の約2割と激減して12月に再び休園となった。その後、大阪地方裁判所民事再生法の手続きを行い支援企業を探していたが見つからず、2009年2月10日、再建を断念し破産手続きに移行し、1972年の開業から37年間の歴史に幕を下ろした

 

///// ここまでは失敗知識データベースから、省略・加筆して転載した。

 

エキスポランド側にも言い分はあったらしいが、探傷試験を行っていなかったのだからその時点でアウトである。

私も、子供を連れて遊園地へ行くことが年に2~3回ある。日曜日ではあるが、朝の6時半から11時までで会社の仕事を終わらせて、12時までに坂戸に戻ってから連れて行く。豊島園が一番近いが(約1時間)、たまに西武園の時もある。正直、どちらも空いているから13時過ぎから17時まで遊べば十分楽しめる(大人が疲れるぐらい)。

しかし、この時どうしても上記エキスポランドの事故が頭をよぎる。あの事故以来、どこの遊園地も法定通り探傷試験を行っているらしいが、客があまり少ないと返って心配になる、採算が合わないと思うからだ。

ジェットコースターに乗っていると(見ていても)、振動と荷重の掛かり方は非常に強いことが分かる。特に、あの振動は機械にとって負荷になると思う。ブームが回って空中でクルクル回転するような乗り物は、摩耗が一定に進むから定期診断だけでもそれ程心配ないと思う。しかし、激しい振動のある乗り物の場合、内部の亀裂から一気に破断に至ることはある。そのため、金属内部の亀裂を見つける探傷試験が必要なのだ。

探傷試験は、非破壊検査の一つである。検査機関に持ち込んで検査する場合と違って、現場で検査を行う場合、磁粉探傷、超音波探傷あるいは、浸透探傷試験の方法となる。X線を使う検査を、外で行うことはないと思う。この中で、超音波探傷試験が一番手軽であり誤差も少ないだろう。ただし、それでも内部の傷を見つけるにはある程度の熟練を要す。最新鋭の機械は、小型で持ち運びも簡単、デジタル表示で傷とノイズを見分けられるとなっているが実はそれほどのものではない。横で見ていて、「良くこれで分かるな~」と言うのが実感である。しかし、非破壊検査を行う人は、非破壊検査協会の認定を受けた有資格者のはずだから信用して良いと思う。できる事なら、「この遊具(乗り物)は、日本非破壊検査協会の認定を受けた〇〇検査員が△月??日に検査を行いました」ぐらいまで表示して欲しいが、無理なのだろうか。