平成31年度技術士試験を説明します-その4
以下は、資料に基づくと言うより、私の推測です。
今回の試験内容変更で、印象的だったのが、
「平成31年度 技術士試験の概要について」と言うPDFでした。
僅か7ページのPDFですが、ここに平成26年3月7日に発表された、「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」がそのまま載りました。
これは、国際エンジニアリング連合(IEA)の「専門職としての知識・能力」(プロフェッショナル・コンピテンシー、PC)を踏まえたものです。
技術士会は、技術士として当然持つべき能力の最低限度をIEAの基準とした訳です。
そこで求められる能力は8つのキーワードで纏められています。
1)専門的学識
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
2)問題解決
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。
3)マネジメント
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
4)評価
・業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
5)コミュニケーション
・業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
6)リーダーシップ
・業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
7)技術者倫理
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
8)継続研さん
・業務履行上必要な知見を深め、技術を修得し資質向上を図るように、十分な継続研さん(CPD)を行うこと。
上記8つの能力の中で最後の継続研鑽を除いた7つは筆記試験で求められている能力そのものです。
IEAの基準を最低ラインにして、そこから日本技術士会独自の要素を加えるつもりなのか?
あるいは、最低ラインの「最低」を高めに設定するつもりなのか?
恐らく後者の方になるでしょう。
1)専門的学識、2)問題解決、3)マネジメント、4)評価、5)コミュニケーション
6)リーダーシップ、7)技術者倫理
上記7つの能力を論文に依って書き分けながら表現するのは慣れないと大変だと思います。
これまでは、平成19年の変更時でも、25年の変更時でも「応用能力」ようするに技術的な問題を解決する力が表現されれば良かったのです。
これからは、そうはいかなくなりました。
今まで以上の文章表現能力が求められます。