技術士試験に「トランスサイエンス問題」その訳は?-2
続けて書きたかったのですが一日空きました。
トランスサイエンス問題は、言い出したワインバーグ博士が核物理学者で原発問題を例に挙げて説明しました。
そのため話が大きく飛躍して「福島の事故を予言した」とまで言う方もいるようです。
もちろんそれは間違いです。それを言うなら「B.5.b」だってもっと正確に予言しています。あれは、テロ対策ですが万一過酷な停電事故が発生した場合、どうなるかを予測してバッテリーやコンプレッサーを用意することを説明しています。
アメリカの行政命令ですから日本が従う必要はありませんが、もし、信じて準備していれば福島の事故の規模は数十分の一で済んだはずです。
話を戻しましょう。
なぜ、トランスサイエンス問題を技術士試験で問題に入れたか?
現在の試験委員の皆さんは、議事録や直接訊いたお話しから推測して以下のように考えているようです。
「現在の巨大テクノロジーは問題が複雑だ。解決策を考えて実施してもその解決策がベ別の問題を発生させる」
「科学技術の問題を科学技術に携わる人間だけで解決できない」
(ここはまさにトランスサイエンス問題そのもの)
「科学技術に携わる人間はそのことを十分承知して問題解決に当らなければならない」
こんなことを主張していますから、これから技術士になる人はそこを理解して欲しいのだと思います。そんな考えがトランスサイエンス問題をⅢの課題解決能力を問う問題文に入れたのでしょう。
科学技術だけで解決できない問題があることを、科学技術の専門家になるための試験に入れるのは奇異な感じです。
一見そう思いました。ですがこれまでの経緯を考えて推測してみたのです。
おそらく、今後ますますこの傾向は強くなると思います。
これまでの技術的解決法が通用しなくなると考えて解答用紙に記入して下さい。
早い話「自動運転のトロッコ問題」なんて技術で解決できない問題です。
現在の自動車は人が運転するから、日本なら年間で5000人程度の死亡事故が発生します。
これが、自動運転なら1件発生してもその車を作ったメーカーの責任を問う。
下手をすると倒産するまで責める。
自動運転でのんびり走れば、死亡事故は1/10程度に減る可能性があります。
しかし、それは容認しないのでしょうか?
タカタのエアバックは世界で17名を死亡させました。
あれは分かっていたのにそのままにしたことが悪いのですが、あのエアバックで死亡を免れた人の数は数千~数万です。
この先、どうなるのか分かりません。
私は科学技術の側の人間として、科学技術で解決出来る問題を解決するように努力します。
技術士試験はこれからますます、考え方が難しくなりそうです。