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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

意識をめぐる冒険

この本は、343頁全10章で構成されています。

そのうち、1・2章は子供の頃からの自分の生い立ちやフランシス クリックとの出会い等自伝的な話になっています。クリストフ コッホが30年前に「意識」の研究を始めるころは、「意識」の研究なんてキワモノ扱いの状態だったようです。研究の方法自体も全く確立されておらず、どうすれば哲学や心理学とは違う科学の土俵に「意識」を乗せることができるのか?そのスタート地点の話を興味深く読むことができます。

3章からは「意識」の謎について語り始めます。脳内で生じている物理化学反応と、その脳が生み出す意識という現象のあいだには大きなギャップがあります。これは埋められないギャップだと考えている研究者も多いようですが、本の作者であるクリストフ コッホは、そう考えません。さらに哲学者や社会学者が科学の弱点を指摘する事実を述べながら、それでも「科学が最も信頼のおける方法である」と明確に主張しています。もちろん、私もそう思います。

4章の冒頭はこんな書き出しで始まります。

専門知識をもたない人が、原子物理学や腎臓透析について持論を振りまわしても、誰も相手にしてくれないのは当たり前だ。ところが、意識の話となると、関連する重要な脳科学の知見をほとんど知りもしないのに、自説を好き勝手に展開しても許されるという雰囲気がある。しかし、そんな適当な言説から意識について学べることなどほとんどない。

脳と意識に関する心理学、神経科学、医学の知識は、日々膨大に蓄積されている。脳科学者や認知科学の研究者は、世界中に5万人以上もあり、毎年、何千報もの新たな論文が発表され、過去の知見の上に積み上げられている。

 (日本では3・11以降、原子力発電の原理を知らない人でも、原子物理学の話をしていましたけど)

5章以降の後半では、コッホ自身の研究成果が語られています。コッホの推測では、おそらく「脳の前方にある前頭前皮質と後方の高次元視覚領域を互いに長い軸索でつないでいるピラミダル・ニューロンの集団ネットワークが意識の内容を担っている」とのことです。ようするに、意識を発生させる神経細胞はないのですが、いくつかの神経細胞が繋がって、相互作用することで意識が発生しているのではないかと考えられている訳です。
これは、とても面白い考え方ですね。

全体的にとても読みやすい本で、それほどの専門知識は必要としません。科学に興味のある高校生なら読めると思います。私は、2日間の通勤電車の中で読み終えました。正味、3時間くらいでしょう。

一つ注意して頂きたいのは、まだ、正解は分らないということです。この本を読み終えても「意識」が何であるのかは、分りません。ただ、最先端ではこんな研究が行われて、現在ここまで解明されたということだけが分ります。もちろん、そこがエキサイティングなところです。