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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

エンジニアは、哲学の夢に魘(うな)される-9

 今回は、プラグマティズムです。「pragmatism」は英語ですが、「pragmatisch」 というドイツ語に由来します。実用主義、実際主義、とも訳されることのある考え方ですが、元々は、経験不可能な事柄の真理を考えることはできないという点でイギリス経験論を引き継いでいます。物事の真理を実際の経験の結果により判断し、効果のあるものは真理であるとするもので、ある意味異色の哲学です。しかし、分りやすくへんてこりんな理屈に陥らないためアメリカでも人気のある哲学と言えます。

 プラグマティズムは私的なクラブに起源を有する思想と言われており、その代表的なメンバーはチャールズ サンダース パースとウィリアム ジェームズです。

 プラグマティズムはジェームズの著作「プラグマティズム」(1907年)によって広く知られるようになり、20世紀初頭のアメリカ思潮の主流となりました。
 心理学者の唱える「行動主義 behaviorism」、物理学者の「操作主義 operationalism」など及んだ影響は広く、現代科学では統計学や工学においてこの思想は顕著です。私は、学生時代、勉強をあまりしませんでしたが(反省してます)、プラグマティズムだけは、様々な授業の中で何度も話を聞かされました。今はどうか知りませんが、30年前だとまだその影響力は強かったのでしょう。

 そのウイリアム ジェームスの『プラグマティズム』ですが、彼はこの本の中でこんなことを言っています。

 プラグマテイストは専門哲学者たちが後生大事に身につけているさまざまな宿癖にたいし決然と背を向けて二度とふりかえることをしない。彼は抽象的概念や不十分なものを斥(しりぞ)け、言葉の上だけの解釈、まちがった先天的推論、固定した原理、閉じられた体系、いかにも尤もらしい絶対者や根源などには一顧をも与えない。彼は具体的なもの十全なものに、事実、行動および力に向う。

~中略~

合理論は論理と天空に執着する。経験論は外的な感覚に執着する。プラグマテイズムはどんなものでも取り上げ、論理にも従えばまた感覚にも従い、最も卑近な最も個人的な経験までも考慮しようとする。神秘な経験でも、それが実際的な効果をもっている場合には、これを考慮するであろう。

『プラグマテイズム』岩波書店・桝田啓三郎訳

  この本は、ウィリアム ジェームズが、教職生活の終わりに1906年から1907年にかけてニューヨークのコロンビア大学で行った講義を編集せずにそのまま収録したものでです。 アメリカの偉大な思想家の一人であるジェームズは、プラグマテイズムという哲学の生みの親であると主張したことはありません。それはチャールズ サンダーズ パースの功績であり、発展させたのはF,C.S,シラーとジョン デユーイと言われています。しかし、ジェームズが、著書『プラグマテイズム』を出版しその理論を明快に分りやすく一般の聴衆に向け披露しなければこれほど影響力のある理論にはならなかったことでしょう。
 ジェームズはプラグマテイズムを「最初のもの、原理、『範曙』、仮想的必然性から顔をそむけて、最後のもの、結実、帰路、事実に向かおうとする態度」であると定義しています。

 明日に続きます。