takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

安全な社会-9

 エンジニアは、信頼性工学だとか、安全設計、チェックッシート、FMEA(故障モードと影響解析)なんてことを色々考えて製品を作ります(建築も含めて)。しかし、身の回りで頻繁に発生する事故の大部分は、ヒューマンエラーに起因することが多く、それがまたエンジニアの悩みのタネでもあります。

 高度なテクノロジーによって作り出される物は複雑であり複雑であるがゆえに人々に驚きや喜び、満足感を与えながら難しさを感じさせます。現代の先進国で生活し生きていくのであれば高度なテクノロジーと全く関係しないということはできないでしょう。原発に反対して家庭の電気を節約しても、買ってくる食料品は電気の力で冷温保存されています。それが、あるから常に安全な食品を食べることができるのです。また、高度に発達した交通・輸送網があるから離れたところで採れた果物や魚介類を美味しく食べることができます。まさに、テクノロジー万歳です。

 とは言え、そのテクノロジーが暴走して事故に巻き込まれては困ります。ドアが開いたエレベータに乗ろうとして乗り込む前にエレベータが上昇を始め挟まれてしまうなんて想像できません。死亡事故にならなくても、エレベータに閉じ込められる事故は、日本全国で年間30~40件程度発生しています(ごく短い時間の停止は除く)。ちなみに、お隣の赤い大国では、2年前にこんなニュースが発せられています。

 

2012年11月5日 12時00分 (2012年11月5日 16時27分 更新)

高層建築物の建設ラッシュが続く中国で、建物の老朽化に伴い、エレベーター事故が急増する懸念が高まっている。これを受けて中国国家品質監督検査検疫総局はこのほど、「エレベーターや関連業界に対する安全上の懸念が高まり、監督圧力が増している」との見解を示した。
中国は世界最大のエレベーター製造国だ。統計によると、年間20%のペースでエレベーターが増加しており、今日も尚、どこかで新しいエレベーターが設置されている最中である。
2011年末時点で201万台に達するエレベーターのうち、死亡事故発生率は1万台=0.2人。この数字は先進国とほぼ同程度だというが、今後、メンテナンスをせず使い続けられた場合、10年以上経過した老朽エレベーターに問題が発生する可能性が指摘されている。
2011年の中国のエレベーター事故件数は57件、うち死者数は42人。業界関係者によると、北京では事故の80%近くがメンテナンス不足を原因にしたものだったという。北京では13万台超のエレベーターに、メンテナンス技師5万人という数字。一部では点検内容よりも、「書類の通過」を目的とした格安業者もいるのだという。
高層マンション、高層ビルで蠢く人々の血管の安全性を、確保して欲しい。命は金よりも重要視すべきである。

 

「命は金よりも重要視すべきである」。まあ、そうでしょうね、今さらですけど。

 57件の事故で死者が42人なんてあり得ません。死亡率73.7%ではエボラよりも怖いです。誰もエレベータに乗らないでしょう。それに、「北京では13万台超のエレベーターに、メンテナンス技師5万人という数字。一部では点検内容よりも、「書類の通過」を目的とした格安業者もいるのだという」。これは、どう言う意味でしょう。書類を通過させるために、5万人の保守エンジニアがいるのでしょうか?何か、数字の桁を間違えていると思います。13万台のエレベータに対して5万人もの保守点検者がいるなら逆に安全です。

 これは、何千件もの小さな事故がもみ消されている確かな証拠です。もし、重大事故だけ報告義務があり、小さな事故は無いことにしようと考えているなら、これからも事故は発生し続けます。皆さん、中国へ旅行に行くときは古いエレベータに注意して下さい。