takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

一般向けの科学の本、最良の本はこれです。

 10年前の2004年12月31日に初版が発行された本ですが、『ガリレオの指』-(ピーター アトキンス著:斉藤隆央訳-早川書房)と言う本があります。サブタイトルは「現代科学を動かす10大理論」、3,456円で今でも購入できる本です。原題も『GALILEO'S FINGER』(The Ten Great Ideas of Science)ですから、ほぼそのままと言ってよいでしょう。

 私は、本を読むと最初のページの空き部分に数行の感想と点数を付けます。100点満点で5点刻み、最低は30点ぐらいです。現在PDF化している本は30年間で購入した本ですがおよそ3,000冊あります。その3,000冊の中で100点満点を付けた本はこの『ガリレオの指』だけです。ただし、点数付けを始めたのは、30歳ぐらいからですので、その前20代の時に読んだ本には点数が付いていません。また、今から点数を付ける気にもなりません。ですから、実際に点数が書いてある本は、2,000冊ぐらいです。

 

 この本の目次は実にあっさりしています。章立てがあるだけで、節や項がないのです。

 

  1. プロローグ 知識の登場
  2. 進化 - 複雑さの出現
  3. DNA - 生物学の合理化 
  4. エネルギー - 収支勘定の通貨
  5. エントロピー - 変化の原動力
  6. 原子 - 物質の還元
  7. 対称性 - 美の定量化
  8. 量子 - 理解の単純化
  9. 宇宙論 - 広がりゆく現実
  10. 時空 - 活動の場
  11. 算術 - 理性の限界
  12. エピローグ 知識の未来

 

 要するに現代科学を10分野に分け、そぞれぞを40頁ぐらいで解説している訳です。訳者である斉藤さんの文もこなれていますからとても読みやすい本ですし、何しろアトキンスの解説が素晴らしい。ドーキンスもそうですが、彼等の本を読むとどうして日本には、こんな本を書く科学者がいないのだろうと思ってしまいます。理工系の学生さんが、自分の専門分野を勉強する場合は別ですが、一般教養課程で科学概論を勉強するならこの本1冊で十分です。また、この本は文系の方でも十分楽しく読める本です。十年経っても絶版になっていませんが、絶版になる前にぜひ購入して読んで頂きたいと思います。

 

 この本の始めの部分に現在は、フィレンツェ科学史博物館に展示されている本物のガリレオの指の写真が掲載されています(もちろん、骨です)。そこには以下の説明文が記されているそうです。

 

Leipsana ne spernas digiti,quo dextera coeli Mensa vias,nunquam visos lnortalibus orbes Monstravit,parvo fragilis molimine vitri Ausa prior facinus,cui non  Titania quondam Sufflcit pubes congestis montibus altis, Nequidquam superas conata ascendere in arces.

 

  この指の遺物を軽んじてはならない。この右手が天空の軌道を調べ、それまで見えなかった天体を人々に対し明らかにした。もろいガラスの小さなかけらを作ることで、太古の音に若き巨人たちの力をもってしてもできなかった偉業を大胆にも初めてしてのけたのだ。巨人たちは、天の高みへ登ろうと山々を高く積み上げたものの、空しく終わっていたのである。

 

 

 事情があって原発のことを書くのは少し休みます。それでこの本のことを各章に分けて書く予定です。全10章、10~15回程度で終わります。ただ、今のところ毎日更新できません。ご容赦下さい。