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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

死後5年掛けて完成、400万字の超大作『失われた時をもとめて』

美術・文学等など

失われた時を求めて』(1913-27)は、14年掛(実際は9年)の超大作です。

 私が持っている本は、筑摩文庫の『失われた時を求めて』全10巻-井上 究一郎訳です。それと、『ジャン クリストフ』と違ってこちらの本は、誰にでもお勧めできるという訳ではありません。小説から何を得るのか、何を得ようと思っているのか、読者によってそれは様々です。この大小説を読んで、実用的な知識が身に付くとか新たな視点を得られるというようなことは先ずあり得ません。

 

 もう一つ付け加えると、劇的なストーリー展開は一切ありません。この作品は、プルーストの分身である語り手の自伝であるとともに、当時のパリの社交界を始めとする風俗が、男女の恋愛や芸術観などとともに克明に綴られた社会批評のような小説になっています。登場人物は、実際にプルーストの周りにいた人を合成して創られていて、当時それが社交界の話題にもなったようです。

 

 フランス語の原作は、

 

第一篇 『スワン家の方へ』 (1913年)

第一部 「コンブレー」

第二部 「スワンの恋」

第三部 「土地の名、名」

 

第二篇 『花咲く乙女たちのかげに』 (1919年)

第一部 「スワン夫人をめぐって」

第二部 「土地の名、土地」

 

第三篇 『ゲルマントのほう』 (1921年-1922年)

第二部 「ゲルマントのほう-II」

 

第四篇 『ソドムとゴモラ』 (1922年-1923年)

第一部 「ソドムとゴモラ-I」

第二部 「ソドムとゴモラ-II」

 

第五篇 『囚われの女』 (1925年)

 

第六篇 『逃げ去る女』 (1927年)

 

第七篇 『見出された時』 (1927年)

 

上記のような構成になっています。

 

 51歳で亡くなったマルセル プルーストが42歳から残りの半生をかけて執筆した大作です。その長さはフランス語原著にして3,000ページ以上、日本語訳では400字詰め原稿一万枚にもなります。筑摩文庫の完訳版では、全10巻の構成になっています。

 

 プルーストは1908年(37歳)頃から「サント=ブーヴに反論する」という評論を書き出し、そこから徐々に構想が広がり、『失われた時を求めて』の題を持つ小説になっていきました。1913年に第1編を自費出版、当初3巻の予定がその後さらに長大化していきました。1919年、第二篇『花咲く乙女たちのかげに』はゴンクール賞を受賞しました。ところが、第四篇の『ソドムとゴモラ』まで完成したところでプルーストは死去(1922年)しています。しかし、第五篇以降も未定稿の状態でしたが、書き上げられていましたので、弟や知人が遺稿を整理して刊行を引継ぎ、第七篇『見出された時』を1927年に刊行して、ようやく完結しました。

 

 ですから、もしご本人が最後まで完成させていれば、第五篇 『囚われの女』以降は、異なる結末になっていた可能性もあります。と言うより、異なっていたでしょう。プルーストは、何時も原稿のゲラ刷ができてから、それを徹底的に直すと言う書き方をしていましたから、執筆が終わっただけでは、半分も完成していないと言って良い状態なのです。しかし、亡くなってしまったのですからどうにもなりません。我々が読むことができるのは、弟や知人が整理して作り上げた『失われた時を求めて』だけなのです。