takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

福島原発事故-22

 久しぶりに、原発の話に戻ります。

 

 東京電力(東電)は、首都圏を含む関東一円に電力を供給する、日本最大の電力会社です。その販売電力量は、日本全体の約3分の1に当たる2934億kWh(2010年度)で、イタリアー国の消費電力に相当します。

 

 それほどの、大電力会社ですが、2012年1月、世界で最も社会的に無責任な企業を選ぶパブリックアイ賞(通称:世界最悪企業賞)で2位に入賞しています。また、日本でも2012年には、ブラック企業大賞に選ばれていますが、これは悪乗りと言っていいでしょう。私は、ワタミ東京電力ブラック企業とは思いません。

 

話は変ります。

 

『証言班目春樹-原子力安全委員会は何を間違えたのか? 』(岡本孝司著、新潮社、2012年)を読むと、安全委員会委員長の班目先生も、事故当日(2011年3月11日)の夜8時頃には、「減圧してから消火用のポンプで冷却水を注入するしか手はないjと考えて、作戦を練り始めていたようです。現場である福島第一原発吉田昌郎発電所長も、11日の夕方5時には、同じシナリオの作戦を指示しています。ところが班目先生は、「原子力安全委員会には福島第一原発の図面がないので詳しい手順を導けなかったと述べています。驚いた話ですが、東京電力は、テロ対策のために、安全委員会に対しても原発の概略図しか渡しておらず、詳細図は現地にしかなかったのです。原発は、同じ場所にある同じ規格の原子炉であっても、配管やバルブの位置は全て異なります。テレビ会議の様子を見ていても本社からは、確認と了承が発せられているだけで具体的なアイデアが何にもでていないのは、詳細図面が無かったからでした。現場から離れているところで、冷静に考え対策案を立てられるはずの本部に詳細図が無いのですから、正直驚きました。いくらテロ対策とはいえ、本店で厳重に管理すればよい筈です、ただし、無いことを事前にチェックしなかったのは、安全委員会側の落ち度です。

 

 また、1~3号機に海水を注入して原子炉冷却を行っている時に、「再臨界の可能性があるから」と、冷却実施を止めたのは、斑目委員長だと言われましたが、これは間違いです。「絶対に再臨界しないのか?」と質問されて「再臨界の可能性はゼロではない」と科学者らしく答えたところ、その言葉を政治家と官僚に利用されただけです。あの時点で、原子炉の専門家が、冷却を止めろと言うはずはありません。そのことは、現場の吉田所長も、所長を支えた大勢の職員も、或いは本店の技術系役員も皆知っていました。やるべきことが、分かっているのにそれが出来ずに手をこまねくしかなかった現場の方々は本当に辛かったと思います。

 

 何度か書いていますが、原子炉は「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」が出来て安全になります。地震で制御棒が挿入され全ての原子炉は停止しました。その後、すぐに緊急冷却システムは動いたのですが、そのシステムが津波で破壊されたのです。そうなると、後は他の方法で冷却するしかありません。その方法が、消防車による海水注入だったのです。