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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

福島原発事故-10

 原発事故の防止は「止める、冷やす、閉じ込める」だと言われています。3月11日の震災では、停止することはできましたが、冷やすことができず結果として閉じ込めることに失敗しました。放射性物質をまき散らす原因となったのは原子炉建屋の水素爆発です。ここでは、あくまで建屋の爆発であることを強調します。原子炉の格納容器は爆発していません。では、鉄骨コンクリートの建屋が吹き飛ぶほどの水素はどこから発生したのでしょうか?

 

 炉心が露出し、燃料の被覆管の温度が高くなると、被覆管中のジルコニウムと水が反応します。その結果、ジルコニウムが酸化し水素が発生します(H2Oである水の酸素がジルコニウムとくっついて、水素だけが離れて行きます)。原子炉建屋では、それ以外にも水素が発生する可能性があるのですが、報告書では以下に記すように、それらの可能性が低いことを論証しています。

 

 タービン建屋内の発電機には、冷却用に水素が用いられています。この水素は、タービン建屋の東側(原子炉建屋とは反対側)に備蓄されているのですが、この備蓄されている水素が、直接原子炉建屋内に流入する可能性は考えにくいようです。そもそも、タービン建屋を経由して流入したのであれば、タービン建屋にも水素爆発による損傷が見られるはずですが、そのような痕跡はありません。したがって、発電機冷却用の水素が原因であるとは考えられません。

 

 その他、使用済み燃料プールにある水素、CAMS校正用水素、バッテリー電解液、水の放射線による分解、亜鉛酸化反応、コア・コンクリート反応およびボロン・カーバイド酸化反応などの可能性も検証していますが、いずれも大爆発の原因となり得るような大量の水素の発生源とは考えにくいとの結論されています。これは、全くその通りでしょう。

 

 ところで、原子炉建屋の水素爆発は、世界の専門家の誰もが実際に起こるとは予測していなかったようです。格納容器の水素爆発については熱心に研究されていたのですが、建屋の爆発についてはほぼ皆無だったというのは、私としては、不思議な感じがします。しかし、現実に誰も心配していなかったのです。政府事故調でもこの点に関する世界の論文を調べたのですが、わずか2点しか見つかりませんでした。さらに、その2点についても、国内やIAEA(InternaJOnal AtomicEnergy Agency、国際原子力機関)など権威ある国際機関で議論された形跡はありません。

 

 原子炉建屋は換気されている、という漠然としたイメージがあったとの証言もあるようです。また、3月11日に、菅総理から「水素爆発の可能性は?」と尋ねられた原子力安全委員会の班目委員長が、「窒素で満たされているので大文夫」と答えたのは、本人も証言している通りです。発電所の現場でも、政府も、安全委員会も格納容器の水素爆発しか念頭になかったのでしょう。

 

1号、3号、4号機の爆発状況の違い

 

 すでに、お忘れの方もいらっしゃると思いますが、2号機だけは爆発していません。それについては、後でご説明します。その前に、爆発した1,3,4号機の状況を見てみましょう。

 

 1号機および3号機では最上階の5階部分が、4号機では4階および5階部分が激しく損傷しています。これは、爆発が1,3号機では5階を中心に、4号機では4階を中心に起こったことを意味しています。また、原子炉建屋4階部分の空間体積は、5階部分の1/5程度しかありません。床面積は同じなのですが、4階と5階では天井の高さが5倍も違うのです。言い忘れましたが、原子炉建屋は5階建てです、しかし、高さ45メートル、普通のマンションなら17~18階建てくらいの高さです。

 

 4号機の爆発は、空間体積が5階の1/5程度である4階での爆発でした。したがって、1,3号機に比べて少ない水素量で起こったと考えられます。1,3号機での水素漏洩は、格納容器上部のフランジ部、マンホール部、下部の機械搬入用ハッチ、電気配線貫通部およびエアロック(人の出入口)などが考えられます。では、定期点検で運転停止中であった4号機爆発原因の水素は、どこから発生したものなのでしょうか。これは、3号機と4号機が共通で使用している排気塔への経路の途中から4号機原子炉建屋4階に逆流入したと考えられています。つまり、3号機で発生した水素が排気塔へ向かう中で一部、4号機へ流れ込んだと考えられています。事実、それ以外に停止していた4号機を爆発させるだけの水素元はありません。

(註:排気塔と言うのは、発電所の写真によく写っている、高さ110メートルの白い塔です)。

 

明日に続きます。