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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

福島原発事故-8

 福島民報という福島県の地元新聞があります。当然なのかも知れませんが、この新聞社は精力的・継続的に福島原発の事故を取上げ詳細な報道を行っています。東日本大震災に関する新聞社のデータベースとしては、最も充実していると言って良いでしょう。宮城県は、河北新報が有力紙のようですが、こちらも継続して大震災関係の記事を載せています。ただ、福島民報の方が原発にフォーカスしている割合が高いため、原発関連のニュースを読みたい方は福島民報のサイトをお薦めします。

 

 2011年3月11日に発生した東日本大震災に関連して、日経サイエンス2011年6月号(4月26日発売)は特集記事を載せました。書き手は、滝 順一(日本経済新聞論説委員)氏です。

 

日経サイエンス2011 年6 月号

 これは「科学の失敗」だろうか。東日本大震災福島第1原子力発電所の事故は,日本の科学や技術の専門家集団にとって手痛い失態だったことは間違いない。 

 昨年の福島民報(2010年11月26日付)にこんな記事が載っていた。

「県原子力防災訓練は25,26日の両日,東京電力福島第1原子力発電所が立地する大熊,双葉両町などで行われている。……最終日は原子炉の冷却機能が失われた状況から始まり,住民避難や初期被ばく医療訓練のほか,第1原発では火災を想定した消火訓練などを繰り広げる」訓練は,送電線の故障で福島第1原発が外部電源を喪失したと想定,非常用ディーゼル発電機の駆動にも失敗して,冷却機能を失った原子炉内で核燃料棒が損傷し放射性物質が圧力容器から漏れ出すというシナリオで実施された。このことは,原発の全電源喪失という事態が関係者にとって,決して想定外ではなかったことを物語る。

 訓練のシナリオは,事故発生2日目に非常用ディーゼルの一部が復旧して原子炉への注水が再開,放射性物質も格納容器内からは漏れず,事故は収束することになっている。

 2006年3月1日, 衆議院予算委員会の分科会で,吉井英勝議員(共産党)は,津波で海水が取水できなくなった場合,原発が冷却機能を失う危険性を指摘した。「最悪の場合は炉心溶融とか起こり得るということを念頭に置いて対策を考えなきゃいけない」。

 原子力安全・保安院の広瀬研吉院長(当時)はこう答えた。「必要な海水を一時的に取水できない場合におきましても,原子炉隔離時冷却系等によりまして原子炉を冷却できる対策が講じられております」。

 

 

 残念ながら訓練のシナリオ通りに非常用電源は復活しませんでした。確かに、原子炉隔離時冷却系は停電の時でも動きます。原子炉の余熱で蒸気を発生させ発電タービンを動かし注水を続けられるはずでした。しかし、残念ながら数時間で停止してしまいました。なぜかと言うと、非常用に備えられた装置は、例えバッテリーであっても、どこかでバックアップ電源を必要とするからです。停電の想定はしていたのですが、それが何十時間も続くとは想定していなかったのです。上記の訓練でもバッテリー電源が確保されているうちに非常用電源が使用できるようになったと想定しているようです。これでは、想定が甘かったと言われても仕方がありません。

 ここで、原子力発電所内での電気設備を簡単にご説明します。

 

1 : 電源設備

原子力発電所内は、通常運転中は自ら発電した電力を使用しますが、発電が止まったときには外部電源を使用します。その外部電源も喪失したときには、非常用デイーゼル発電機を頼ることになります。

1-1 : M/C:Metal‐Clad Switch Gear(メタクラ)

6,900Vの高圧電源用金属閉鎖配電盤。海水ポンプや復水ポンプなどの大型設備を駆動するとともに、下記のP/Cに電力を供給しています。

1-2 : PC:Power Center(パワーセンター)

低圧480V交流電源用配電盤。M/Cからの電力を480Vに電圧を落として配電しています。発電所内の多くの設備は、このP/Cで駆動されています。

1-3 :  MCC:Motor Control Center

P/Cから受電した電力を、小型開閉器を介して小型設備に供給しています。(交流480V、210V)。

1-4 : DC:Direct Current(直流電気)

MCCからの交流電力を直流に変換し、バッテリーを充電したり、制御・計測用および直流電動弁などの電源として使用したりしています。バッテリーは、交流電源に比べ停電のリスクが小さいと考えられていたのですが(要するに電池ですから)、今回の事故では、直流電源の多くを喪失しました。250V、125Vおよび24Vの3種類があります。

(「福島原発で何が起こったのか」-淵上正朗より)

 

 地震で送電線がやられ、津波で非常用ディーゼル発電機がやられ、配電盤が水につかり、バッテリーの多くも海水に浸漬されてしまった訳です。訓練では、非常用ディーゼルは停止しましたが、バッテリーも配電盤も生きていました。これは、大きな違いです。