読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

『マクベス』、私のナンバーワン悲劇-3

書評

日本語訳は、恩師福田恆存シェイクスピア全集第13巻-新潮社刊を使いました。

 

第1幕第3場

MACBETH. [Aside.] Two truths are told,

As happy prologues to the swelling act

Of the imperial theme.

2つは当たった、王位を賭けた壮大な芝居には、もってこいの幕開きだ。

(魔女の予言通り、グラミスの領主となりコーダの領主にもなってしまった。そのため、マクベスはさらに上を狙う野心を抱きます。)

 

第1幕第4場

MACBETH.        Stars, hide your fires;

Let not light see my black and deep desires.

ええい、星も光を消せ! この胸底の黒ずんだ野望を照してくれるな。

(この台詞はダンカン王の前で傍白として語られています。マクベスは、ダンカン王から、このたびの戦争での功績を誉めたたえられています。目の前のダンカン王に対しマクベスは変わらぬ忠誠を誓いますが、腹のなかでは別なことを考えています。)

 

第1幕第5場

LADY MACBETH.      Come, you spirits

That tend on mortal thoughts, unsex me here

And fill me from the crown to the toe top-full

Of direst cruelty!

さあ、血みどろのたくらみごとに手を貸す悪霊達、私を女でなくしておくれ、頭の天辺から爪先まで、恐しい残忍な心でいっぱいにしておくれ!

(今夜、ダンカン王が自分の城に泊まると聞いて、マクベス夫人はおそろしい計画を思い描きます。観客はマクベス夫人を残忍で大胆な女だと理解するでしょう。)

 

第2幕第1場

MACBETH. Is this a dagger which I see before me,

The handle toward my hand? Come, let me clutch thee.

I have thee not, and yet I see thee still.

Art thou not, fatal vision, sensible

To feeling as to sight? 

短剣ではないか、そこに見えるのは、手にとれと言はんばかりに? よし、掴んでやる、掴めない、日には見えるのだが。忌はしい幻め、見えても、手には触れぬのか?熱に犯された頭が造りあげた幻覚にすぎぬというのか?

(有名な宙吊りの短剣の場面です。ここで話す台詞は40語のうち、33語が単音節語になっています。そのため、日本語訳では句点を多く入れているようです。)

 

第2幕第1場

MACBETH.    . . . thus with his stealthy pace,

With Tarquin's ravishing strides, towards his design

Moves like a ghost.

こうして抜き足さし足、ルクレースを手ごめにしたタークィンよろしく、獲物に向つて、もののけのように忍びよる。

(ルクレース、タークィンは「ルクレースの陵辱」と言うローマ時代の物語。シェイクスピアは物語詩としてマクベスとは別の作品にしています。)

 

第2幕第1場

MACBETH. I go, and it is done; the bell invites me.

Hear it not, Duncan, for it is a knell

That summons thee to heaven, or to hell. 

さ、行け、それで、終わりだ。鐘がおれを呼んでいる。

聴くのではないぞ、ダンカン、あれこそ、貴様を迎へる鐘の音、天国へか、それとも地獄へか。

(劇的な場面です。暗殺実行の直前、静まり返った舞台に驚くほど大きな音で鐘が鳴ります。)

 

第2幕第2場

MACBETH. I have done the deed. Didst thou not hear a noise?

LADY MACBETH. I heard the owl scream and the crickets cry.

マクベス:(声を低めて)やつてしまつた……音がしなかつたか?

夫人:フクロウの鳴く声が、それからコウモリの音と。何か声をおだしになつたのでは?

(フクロウやコウモリなど夜を暗示させる鳥の声が効果的です。)

 

第2幕第2場

MACBETH. I heard a voice cry, "Sleep no more!

Macbeth does murther sleep" -the innocent sleep,

Sleep that knits up the ravel'd sleave of care,

The death of each day's life, sore labour's bath,

Balm of hurt minds, great nature's second course,

Chief nourisher in life's feast-- 

どこかで声がしたようだつた、「もう眠りはないぞ― マクベスが眠りを殺してしまった」と――あの汚れのない眠り、もつれた煩いの細糸をしっかり撚りなおしてくれる眠り、その日その日の生の寂滅、辛い仕事のあとの浴み、傷ついた心の霊薬、自然が供する第二の生命、どんなこの世の酒盛りも、かほどの滋養を供しはしまいに―

(これはマクベスがダンカン王を暗殺したあと、どこからか聞こえてきた声にうろたえる台詞です。すでに、後悔する気持ちが芽生えています。)

 

第2幕第2場

MACBETH. Will all great Neptune's ocean wash this blood

Clean from my hand? No, this my hand will rather

The multitudinous seas incarnadine,

Making the green one red.

大海の水を傾けても、この血をきれいに洗ひ流せはしまい?ええい、だめだ、のたうつ波も、この手をひたせば、紅一色、緑の大海屋もたちまち朱と染ろう。

(もちろん、落ちないのは単に手に付いた血の染みだけではありません。鮮やかな罪の描写です。)

 

第2幕第2場

LADY MACBETH. A little water clears us of this deed.

How easy is it then! 

ちよっと水をかければ、きれいに沿えてしまう、何もかも。訳もないこと!

マクベス夫人はこの時は気を強く持っていますが、後で手についた血のしみとにおいに悩まされます。)

 

第3幕第2場

MACBETH. Duncan is in his grave;

After life's fitful fever he sleeps well.

ダンカンはいま墓のなかにゐる、生きる不安の発作からのがれ、静かに眠っているのだ。

(王になったものの、思い描いていた栄華はなく、マクベスが手に入れたのは「発作だらけの熱病」の人生だけでした。王位と引き替えに失った眠りの価値を、マクベスは初めて知ることになります。)

 

第5幕第5場

MACBETH. Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow

Creeps in this petty pace from day to day

To the last syllable of recorded time;

And all our yesterdays have lighted fools

The way to dusty death. Out, out, brief candle!

Life's but a walking shadow, a poor player

That struts and frets his hour upon the stage

And then is heard no more.

あすが来、あすが去り、そうして一日一日と小きざみに、時の階を滑り落ちて行く、この世の終わりに辿り著くまで。いつも、きのうという日が、愚か者の塵にまみれて死ぬ道筋を照してきたのだ。消えろ消えろ、つかの間の燈火! 人の生涯は動きまはる影にすぎぬ。あわれな役者だ、ほんの自分の出場のときだけ、舞台の上で、みえを切つたり、喚いたり、そしてとどのつまりは消えてなくなる。

(これも、有名な台詞ですが、舞台で観るとなおさら感動できます)

 

もう1回続きます。