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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

高速増殖炉「もんじゅ」でのナトリウム漏洩

工場・施設の事故

1995年(平成7年)12月8日 、福井県敦賀市白木2丁目、動力炉・核燃料開発事業団(通称-動燃)の実験炉、高速増殖原型炉もんじゅの試験運転中に、配管の温度検出器取出し部から、2次系ナトリウムが漏洩しました。漏洩の原因は、温度計のさや(ウェル)が流体振動によって疲労破壊し、さやが折損した結果でした。また、このナトリウム漏洩の警報によって原子炉を手動停止し、配管部のナトリウムをナトリウム貯蔵タンクに移しました。漏洩の原因は、前述した温度計を保護している金属の鞘の折れですが、折れた原因は、設計規格の不備によって、鞘の設計に際して交互渦による流れ直交方向の振動しか評価しなかったことにあります。

図無しで解説するのは難しいのですが、こう考えて下さい。

 

  1. 配管内を流れる流体のナトリウムの温度を測定したい。
  2. 温度計をそのまま、配管内に突きだしてはすぐに折れてしまう。
  3. 温度計を金属の鞘に入れ、それを配管内に突き出す。
  4. 温度を測定するためには、金属はなるべく薄い方が良い。
  5. 平均の温度を測定するためには、配管の真ん中あたりに温度計の先端を設置したい、そのため突き出し長さは長くなる。
  6. 薄い金属で保護された温度計を長く突き出す。
  7. ナトリウムの流れによって温度計は振動する
  8. 流体中の流れの渦には、交互渦とカルマン渦がある。
  9. 今回は、交互渦しか評価しなかった。
  10. しかし、実際にはカルマン渦が発生し鞘は振動を続け根元の部分が疲労破壊した。

 

ざっと、こんな感じです。後から考えれば「専門家が、そんな当たり前のことを知らなかったのか?」と思います。私もそう思いました。連結部分の鞘の根元にしても、テーパやRで繋げばもっと強度は上がっていたはずです。また、温度計の測定位置にしても、馬鹿正直に真ん中まで突き出すこともなかったでしょう。半径のさらに半分のところで測定しても温度分布はほぼ一緒のはずです。

 

以下は、失敗知識データベースから省略した転載です。

 

図7 対象渦の流体振動による温度計さや折損のイベントツリー図

カルマン渦による流体振動には、交互渦による流れ直交方向の振動と、対称渦による流れ方向の振動の2種類がある。温度計さやの振動による振幅と流速の関係を図8に示す。設計規格の不備によって、前者のみを評価し、後者を評価しなかった。しかし、運転中に対称渦による流れ方向の振動が生じた。その結果、さやは共振と段付き形状の応力集中によって、高サイクル疲労破壊に至った。さやの折損によって、ナトリウムが漏洩した。 

経過

もんじゅは1995年12月8日、原子炉を起動し、40%出力試験の一環として、プラントトリップ試験を行うために、出力を上げていた。18時47分に、「中間熱交換器C 2次側出口ナトリウム温度高」の警報と火災報知器が同時に発報し、その1分後に「C 2次主冷却系ナトリウム漏洩」警報も発報した。このために、2次主冷却系配管室(C)の扉を開けたところ、煙の発生を確認するとともに、火災報知器の発報が拡大した。ナトリウム漏洩と判断して、21時20分に原子炉を手動停止し、配管部のナトリウムをナトリウム貯蔵タンクに移した。配管室(C)を調査した結果、中間熱交換器2次主冷却系出口配管温度検出器取出し部からのナトリウム漏洩が確認された。 

 

 原子力以外の分野でも、流体振動疲労の事故は少なからずあります。欧米では煙突の事故が多数発生しています。日本で煙突の事故がないのは、耐震設計の規制が厳しく、頑丈にできているからです(昔は日本も多かった)。しかし、残念ながら温度計のウェル(鞘)に耐震設計の規制はありませんでした。この場合、当然想定される事象の見逃しや見込み違いは、技術者の過失と考えるべきです。

以下、上記事故とは違う話ですが、一言。

私は、原子力発電に賛成の立場です。しかし、世の中が認めないものは無理に作るべきではないと思っています。そのための、啓蒙と合意形成に力を入れ全体的に分って貰ってから原子力発電を行うのが良いと思います。全く注目されていませんが、他の発電方式だって十分危険です、エネルギーは、1ヶ所に大量に集めると危険なのです、原子力だけが危険なのではありません。

ですが、高速増殖炉核融合は実験を中止あるいは、休止して良いと思います。後、数十年何にもしないで周辺技術が進化してから行っても問題ありません。今の技術で無理矢理作ろうとしても問題点が多すぎてお金と時間が掛かりすぎます。今、集中して開発するなら第四世代の原子炉です、これなら手の届くところにあります、早く商業運転できるようにしましょう。