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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

Hebei Spirit号原油流出事故-韓国史上最悪の重油流出事故で裁判は迷走

2007年(平成19年)12月7日朝、韓国大山港で大規模な石油流出事故が発生しています。事故後裁判で異常とも思える判決が出たため対応悪さがが国際問題になりました。6年前のことですから、ご記憶されている方も多いと思います。日本の新聞でも割と取上げられています。

韓国当局は公式にこの事故が、1995年に起こった石油流出を凌いで、韓国で最悪の重油流出事故であるとしています。しかし、世界的に見れば、この石油流出事故はエクソンバルディーズ号原油流出事故の3分の1程度の規模です。

事故の概要はこうです。

大山港沖の泰安郡の黄海海域で、前日夜に投錨して停泊していた香港船籍の原油タンカーHebei Spirit号(ヘーベイ・スピリット号)が、船団の接近を認識、管制センターに進路情報問い合わせを行いました。管制センター側は、船団側船長に携帯電話を通じて連絡を行い、管制センターからタンカー側に衝突危険通知が出されました。しかし、この際、タグ船団は波に流されていました。

午前6時52分、荒波の影響でクレーン船のワイヤーがねじれて破断します、直ちにタグ側から管制センターにタンカーの移動を要請しましたが、ワイヤー破断は通知しませんでした。しかも、タンカー乗組員の多くは下船しており、即時移動は不可能であったため、タンカー側は移動不可能の連絡を行ったのです。その後23分後の、午前7時15分、破断し漂流してきたクレーン船が、ヘーベイ・スピリット号左側面に激突しました。

この事故で、死傷者はありませんでした(ほとんど人はいなかった)、衝突によってヘーベイ・スピリット号の5個のタンクのうち3個に穴が開き、積んでいた26万トンの石油(カフジ産原油)のうち、10,800トンの重油が流出しました(量には異説もあります)。

事故が発生した当初は冬で温度が低いために、原油の流出は広がらないと考えられていたようです。しかし、季節外れの温かさと強い波、強い風等の天気によって、初期の予想を超えて石油が流出していきました。

12月9日には、油膜は10メートルから10cmの幅で33kmの範囲に広がっています。そのため、30以上の浜辺とこの地区の半分以上の養殖場が重油の影響を受けたようです。推定が多いのですが、細かなデータがあまり見つからないので詳細が分りません。中国もそうですが、韓国も事故のデータはあまり見せないようです。

時期的に初冬だったため、多くの渡り鳥はこの地域にまだ渡ってきていなかったのですが、カモメ、マガモなどの他の海で生活する生物は油まみれになって見つかっていたようです。さらに、12月15日には、タールの塊は保寧市にまで到達し、全羅北道の群山市にまで広まってしまいました。

事故後の裁判では、おかしな判決がでます。クレーン船を伴う、船団側が指定航路航路および侵入違反を犯していあたため、1審ではタンカーの船長、一等航海士は無罪とされました(それが普通です)。ところが、2審において乗組員に対する逆転有罪判決が出され、船長に懲役18ヶ月及び1000ドルの罰金、一等航海士に懲役8ヶ月の判決がでたのです。12月20日には大韓民国海洋警察庁が事件の原因調査を終え、責任はクレーン船の船長、曳航船の船長、タンカーHebei Spirit号の船長のいずれにも見られるとしたのが原因でした。そのため、2人は収監されます。

しかし、この判決に国際世論は反発します。先ず国際運輸労連、インタータンコ、インターカーゴをはじめとした海運労使団体が反発します。さらに、インド船員組合・インド海事組合・商船組合に至っては韓国行きの船舶への乗務をボイコットする事態となりました。それから、2年、2009年 4月23日 、最高裁判所1部は、控訴審判決をすべて破棄しました。

事故の真因を突き止め、再発を防止するのは学問(この場合は工学的な学問)の話しです。逆に、責任を追及し、罰金を払わせたり、責任者を逮捕したりするのは法律上の問題です。私は、これを分けた方が良いと考えています。科学的に事故の原因を突き止めようとする時に、刑事責任の追究が及ぶと当事者は真相を話しません。私は、アメリカのように司法取引を行って真相を語らせた方が良いと思っています。犯罪に近いような、事故もありますが、やはり事故は事故です。起きてしまったことならば、その教訓を次に活かした方が後の人は助かります。「そんな甘いことではダメだ」と言う人も多いのですが、懲罰を重くしても事故は防止できません。故意に発生させている訳ではないからです。