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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

「まだらの紐が!」-シャーロキアン技術士による簡単な解説

「まだらの紐」(The Adventure of the Speckled Band)は、シャーロック ホームズ シリーズの一つで、56ある短編小説のうち8番目に発表された作品です。『ストランド・マガジン』1892年2月号初出。同年発行の短編集『シャーロック・ホームズの冒険』(The Adventures of Sherlock Holmes) に収録されたました。

1927年3月号の『ストランド・マガジン』で、ドイルはこの作品をホームズの短編の中で第1位に置いています。また、『オブザーヴァー』誌の読者による順位付けでもこの作品が第1位に置かれています。日本でも、ホームズ クラブの人気投票では、毎年1~3位に入る人気作品です。他は「赤毛連盟」や「パスカヴィル家の魔犬」などが入ります。

また「まだらの紐」は、我々シャーロキアンから見ても、つっこみどころ満載の作品であり人気があります。先ずはあらすじを簡単に説明しましょう。

 

以下、あらすじは、創元社推理文庫-「シャーロック ホームズの冒険」(阿部知二訳)を参考にしています。

 

ジュリアとヘレンのストーナー姉妹は、亡くなった母親の財産を相続しましたが、母親の再婚相手であるロイロット医師にその遺産を管理されています。一家は、サリー州にあるロイロット家の古屋敷に住んでいました。姉妹は、結婚して家を出る時に父親が管理している母の遺産をそっくり持って出ることができます。義理の父である、ロイロットにしてみれば、娘が結婚しない方が良い訳です。

物語が始まる2年前、姉のジュリアは、結婚の直前に謎の死を遂げます。ヘレンの証言によれば、ある夜、低い口笛のような音が聞こえた後「まだらの紐(Speckled Band)が!」と言う意味不明の言葉を残して死んでしまったのです。

そして2年後、物語が始まる朝、近々結婚することが決まったヘレンは、昨夜の不気味な体験に恐怖を感じ朝一番の列車に乗ってロンドンのベーカー街221番地Bを訪れホームズに相談します。ヘレンは、古い屋敷の修理の都合で、現在は姉の部屋で寝ていること、また、昨夜は姉が亡くなった時に聞いた低い口笛の音が聞こえたことなどを話します。ホームズは、ヘレンの話を聴き、事態は一刻を争う状態であると推測します。その日の午後は、ロイロット医師が留守であることを聞いたホームズは、ワトソン医師と共にロイロット屋敷に向かい現在はヘレンが寝ているジュリアの部屋、ロイロット医師の部屋を確認します。

そこには、ホームズの推理に確信を与えるものが多くありました。

へレンが使っている部屋に、室外ではなくロイロット博士の部屋に通じている通風孔と通風孔に取り付けられた引いても鳴らない呼び鈴の紐があり、呼び鈴の紐の真下になるように部屋の床にしっかりと固定されているベッドがあったこと。

ロイロット博士の部屋には金庫が置いてあり、猫もいないのにミルクの入った皿があった他、先の部分が輪の形に細工された奇妙な鞭があったことです。

ホームズは、ヘレンが非常に危険な状態であることを告げ、自分の言うとおりに行動して欲しいと説明します。ホームズとワトソンは、その後、屋敷を出て近くの小屋に隠れます。ヘレンは、ロイロット医師に無断で本来の自分の部屋へ移ってベットに入り、ジュリアの部屋には、ホームズとワトソンが忍び込みます。そして、夜中を待っていると・・・。

 

と言う訳で、毒蛇を調教し義理の娘2人を殺そうとしたロイロット医師は逆に蛇にかまれ死んでしまいます。ワトソンは、帰りの列車の中でホームズに「それでは、君が間接的にロイロットを殺したことになる云々」と言います。しかし、ホームズは「この事に対して僕は少しも良心の呵責を感じない云々」と答えます。

この作品には、ホラー映画のような怖さがあり、それが人気の秘密にもなっています。しかし、トリックには無理が満載です。以下、その無理を紹介しましょう。

  • 毒蛇を金庫に入れていた、窒息しませんか?
  • 爬虫類の蛇をミルクで飼育していた、蛇はミルクを飲んだり舐めたりしません。
  • 呼び鈴の紐を伝って降りてきた蛇をホームズはムチで叩きます、話の中で蛇は引き返しますが、普通ならその場に落ちます。
  • 蛇を操るのに、口笛を吹いていたようですが蛇に聴覚はありません、つまり口笛は聞こえません(厳密に言うと、耳孔や鼓膜は退化しました)。

このように、おかしなところが沢山あります。しかし、シャーロキアンはそこを逆手に取ることもあります。

実は、この物語は、ヘレンが義理の父を殺そうとして企んだ事件だったのです。だって、状況は誰が考えてもおかしいでしょう。ベットの固定も、通風口も、呼び鈴も、結婚近づいたら急に部屋を移されたことも。普通の大人なら少し考えれば分かります。初めてなら分らないかもしれませんが、2年前に姉が死んでいるのです。ヘレンは、知っていたのですロイロットが考えたトリックを。そこで、そのトリックを使って逆に完全犯罪を企みホームズを利用しました。それが、この「まだらの紐」と言う作品に隠された意図です。

まあ、他にもいくつかの異なる解釈はありますが、一番面白いのはこのヘレンによる完全犯罪説です。

こんなことをまじめに考えて発表している人達、それがシャーロキアンです。