シャーロキアン技術士・6(アブダクション)
今回は、アブダクションと帰納、演繹の違いを簡単に説明します。
先ず、演繹
- この箱の中のボールペンは全て黒である。(規則)
- ここにあるボールペンは、全てこの箱の中のものである。(事例)
- ゆえに、ここにあるボールペンは黒のペンである。(結果)
次が、帰納
- ここにあるボールペンは、全てこの箱の中にあったものである。(事例)
- これらのボールペンは全て黒い。(結果)
- ゆえに、この箱のボールペンは全て黒である。(規則)
最後にアブダクション
- この箱の中のボールペンは全て黒である。(規則)
- ここにあるボールペンは全て黒である。(結果)
- ゆえに、ここにあるボールペンは全てこの箱の中のものである。(事例)
何となくお分かり頂けますか?
この中で論理的な間違いはなく、常に正しいのは演繹だけです。演繹はしっかりとした三段論法になっています。帰納やアブダクションは正しい三段論法になりません。
帰納は、全体の中からサンプルを取り出してそれを調べています。箱の中に100本のボールペンがあったとしてその内20本を取り出し、それが黒のペンだからと言って後の80本も全て黒であるとは言えません。
また、アブダクションは、箱の中のペンは全て黒ペンだと分っていて、その脇に黒のペンが10本あった時、このペンは箱の中にあったものだろうと考える訳です。しかし、どこか他のところから持って来たかもしれませんし必ずそうだとは言えない時もあります。
しかし、形式論理学上はそうであっても、日頃の業務の中で発生した問題を解決しようとする時はどうでしょう。毎日、見ているものなら直感的に結果から原因が浮かぶ場合が多いのではないでしょうか。少なくとも、その浮かんだ原因に的を絞って調査を開始すると思います。データを集めるとしても闇雲に何でも集めるのではなく、仮説に沿った原因を調べるようにデータを集め、確証を得るはずです。そのため、アブダクションは、問題解決の速度が速いと言えるのです。
もちろん、思い込みにより間違うこともあります。それは、データを集め出すとすぐに分りますから、仮説を立て直せば良いのです。ですから、自分が体験したことも無い未知の問題解決には向いていません。しかし、日頃の業務の中で発生する問題は毎日経験していることの中の異常なのです。当てずっぽうで仮説をたてるのとは異なるなずです。ですから、ホームズが使ったアブダクションは問題解決の最速手法だと言えるのです。