takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

技術者倫理、入門前

まえがき(ブログに前書きは変ですが、将来1冊の本にしたいと思っていますので、このテーマも事故・災害の間を縫って暫く続くと思います)

 

「技術者倫理」と言う言葉があります。何となく分っているようで実は良く分っていない言葉です。

「技術者倫理」と言う言葉を明快に、論理的に説き明かすには、どうすればようのでしょう。そもそも、そんな説明ができるのでしょうか。

ズバリと答えるのは現時点では難しいかもしれません。「技術者としての正しい行動指針なのだから簡単だ」と言う方もおられるようですが、それほど簡単で単純なものとは思えません。小さな工場の責任者として長年製造業に携わってきて、技術的な難しい問題にぶつかっても物理現象である機械加工では、「そうだったのか」とか「分った」と思える瞬間がありました。しかし、組織の中で働く技術者・技能者の「倫理」となると、これが正解だとはなかなか言えません。一瞬、これかもしれないと思うことはあるのですが、霧の中を歩いているようですぐに見えなくなってしまいます。

私が以下の文章でで述べようとしているのは、「技術者倫理」とは、何かということ、そして、技術者はなぜその倫理を守らなければならないのかということ、さらに、後に続く若い技術者にそれを伝えるにはどうすれば良いのかということです。

今のところ、完成した理論がある訳ではありません。私が示したいのは、一つの戦術です。こんなふうに考えれば、上手く行くのではないかという提案、製品事故を防止し、リコールを減らし最終的には世の中をよくする方向へ繋がる考え方を示したいと思います。

「技術者倫理」の問題には、哲学や倫理学を専門に研究されている方もいらっしゃいます。私の示し方は、総論から事例、事例の考察というように進みますので、言葉の定義から厳密に考えておられる方には不満が残ると思います。言葉の定義に関して、あるいは、メタ倫理学の部分に関してはさらりと触れるだけで次へ進むことにしました。そこから、始めようとすると、話が長くなり過ぎると思ったからです。

技術者に限らず、人間の生き方は極めて多様ですから、こじつけや歪曲なしに解説することは容易ではありません。しかし私は、歪曲されたものの見方は好きではないし許容できません。倫理というのはコンセンサスの得にくい問題であって時には「問題の所在さえ」人によってまちまちになります。少数の偏った出発点なくしては、どこにもたどりつけなくなります。皆さんは、すぐに理解されると思いますが、私は、倫理や道徳を古典的な考え方から導き出すことに反対です。「技術者は侍であれ、技術者倫理は武士道を基本とすべし」などと仰しゃる方もおられるようですが、150年前に黒船という当時の先端技術によって滅ぼされた武士道を現代に甦らせてどうするつもりなのでしょうか。

 

こんな感じで次回以降続けます。