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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

メートル法とポンド・ヤード法の勘違い、火星探査計画は水の泡

1999年(平成11年)9月23日、火星探査機マーズ・クライメート・オービターは、約6.6億kmを9ヶ月かけて飛行した後、火星の軌道インパクトで炎上した。コロラドのR社のエンジニアはデータをポンド単位で送信していた。しかしデータを受け取ったパサディナのAミッションコントロールでは、常にメートル法を使用していた。発射の際からこの状態であったにもかかわらず、誰も気づかず、最初はわずかな誤差が生じただけだったが、9ヶ月でエラーが蓄積し、失敗に終わった。

事象

1999年9月、火星探査機マーズ・クライメート・オービターは、約6.6億kmを9ヶ月かけて飛行した後、火星の軌道インパクトで炎上した。火星表面から約150キロの高度で接近するはずであったが、60キロ以内に接近してしまった。同機はまた、今年12月初めに火星への着陸が予定されている兄弟分の着陸機『マーズ・ポーラー・ランダー』の通信中継局という役目も負っていた。

経過

マーズ・クライメート・オービターは1998年12月、火星の地形、水の分布、気象パターンなどの記録を目的として打ち上げられた。1999年9月23日(アメリカ東部時間)火星を周回する予定であったが、通信が途絶えた。ディープ・スペース・ネットワークの直径70メーターのアンテナを使用して探したが、24日に捜索が打ち切られた。マーズ・クライメート・オービターは、予定では火星表面から約150キロの高度で接近するはずであったが、60キロ以内に接近し、致命的なダメージを受けた。

原因

コロラドのR社のエンジニアはデータをポンド単位で送信していた。しかしデータを受け取ったパサディナのAミッションコントロールでは、常にメートル法を使用していた。発射の際からこの状態で、9ヶ月の間にエラーが蓄積していた。この単純な失敗を検知できず、訂正できなかったことに問題がある。

対策

兄弟分の着陸機マーズ・ポーラー・ランダーのプロジェクトに同様の問題が生じないように、新しい責任者を加え、計画を再検討し、ディープ・スペース・ネットワークがより頻繁に通信に利用できるよう改善するという対策をたてた。

知識化

小さなエラーも放っておくと命取りになる。また、エラーを起こしても、それをすぐに発見し、修正できるシステムの構築が重要である。

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載しました。

 

一時期の間ですが、科学界を賑わせた事故です。実際のところ、データ転送のチェックは行われていませんでした。通常は、以下2通りの試験を行っていたそうです。

  1. AMDデータの流れを、最初から最後まで通し試験を行う。
  2. AMDより計算された結果とは別に、計算を行い、チェックする。

しかし、今回は、予算削減のためにどちらも省いてしまいました。これは、片方だけでも行っていれば単位の変換が行われていないことに気付きますので、プロジェクト・リーダとしては、痛恨のミスと思ったことでしょう。

上記を簡単に繰り返します。地上局は、ヤード・ポンド単位を使用して探索機に命令を送りました。探索機は、本来メートル単位に換算して受け取るべきデータを換算せずに受け取り、異なる単位の数値で機体の制御を行ったのです。打ち上げられたのは、およそ9ヶ月前、1998年12月11日です。作り始めたのはそれより2年も前です。およそ、3年に渡ってだれも使用している単位の違いに気がつかないとは、正直情け無いお話です。「NASA!どうしたんだ!」と言いたくなるところです。日本では、科学技術の世界でメートル法以外の単位を使うことはありません。しかし、アメリカは今でもインチで図面を描いています。私の会社は、航空宇宙関係の仕事はしていませんが、医療機器関係では海外の仕事も受注しています。アメリカ以外の国は、メートル法で図面を描いています。アメリカ人の気質なのでしょうか、それともフランスで考案されたメートル法を使用するのは沽券に関わると思っているのでしょうか。その辺は、知り合いがいないので良く分りません。

ちなみに、インチで描かれた図面で受注した場合、単位の変換は私が行っています。昔は、全部の数値を電卓で計算して修正していました。今は、CADで自動変換ができますから100項目あっても10秒掛かりません。しかし、極希ですが見落とすことがあります。CADの図面の数値を手書きで直して描いてある図面があるのです、これは、こちら側のCADが寸法として認識できませんから、修正できません。何と言いますか、実に大雑把です。精密機器に関する製造・製作能力は、まだまだ日本の方が上を行ってます。これは、自惚れでも何でもなく、本当にそうなのです。