takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

三重県のゴミ固形化燃料製造設備で火災発生、鎮火まで47日間

2003年(平成15年)8月14日、三重県 多度町にある新型の燃料加工設備で火災が発生した。

事例概要

設置以来何度かトラブルを繰り返していたRDF燃料発電設備のRDF貯蔵槽にあった大量のRDFが発熱した。放水などで対応している時に最初の爆発が起こった。消火が進まず、次に打つ対策の工事をしている時、最初の爆発から5日後に2回目の爆発が起こり消防士2名が亡くなった。完全に鎮火するまで、最初の爆発から47日を要した。

[注: RDF-Refuse Derived Fuel 家庭から出る可燃性のゴミ(一般廃棄物)を破砕、乾燥し、石灰を加えクレヨン状に圧縮・成型した燃料であり、石炭等の固形燃料とは異なる。]

事象

ゴミ固形化燃料(RDF)発電所のRDF貯蔵槽でいくつかのトラブルがあった。それらに続いて8月14日に爆発が起こった。その対策で数日間放水を継続していたが、5日後に再度爆発が起こった。その後も貯蔵槽内で燃焼を続け、内容物RDFの残りを貯蔵槽から抜き出し、鎮火が宣言されたのは47日後の9月27日であった。

経過

1.当該爆発事故に至るまでの発熱、発火トラブルの経過

2002年12月 1日 運転を開始した。

12月23日 貯蔵槽下部で異常発熱し、RDFの一部が燃焼した。

2003年 7月20日 別の倉庫に保管していたRDFの搬出作業中に発煙が起こった。

7月20日 貯蔵槽で水蒸気の発生を確認した。

7月23日 貯蔵槽温度上昇、発火を確認、一部のRDFを抜き出しを行った。

8月11日 貯蔵槽内火災は8月に入っても鎮火せず。貯蔵槽下部5箇所から注水を開始した。

8月12日 注水口を28箇所に追加した。

 

2.当該爆発事故の経過

2003年8月14日 注水作業を継続中、15:05第1回目の爆発が発生し、作業員4名が負傷した。

17:00頃から放水を開始して、18日まで続行した。

8月18日15:00頃 貯蔵槽上部点検孔から内部への放水を開始した。

16:00頃 放水を中断し、内部状況を観察した。

8月19日9:40~12:00頃 13:20~ 放水をした。

14:00頃 放水口を開口する火気工事を開始した。

14:17 2回目の爆発が起こり、消防署員2名が死亡し、作業員1名が負傷した。

以降 放水継続し、9月27日になって鎮火した。 

原因

事故後の検討結果では、以下の原因が推定されている。

 

1.発熱・発火原因

(1) 有機物の発酵: RDFには発酵を起こす微生物が存在することが確認され、管理方法によっては発酵に十分な水分が存在する。

(2) 無機物の化学反応: 消石灰が炭酸ガスと反応して発熱する。発酵をしているRDF中では消石灰の炭酸化が並行して存在する。

(3) 搬入時の初期温度: 通常のRDF製造では考えにくいが、施設のトラブル時などで高温度のRDFが製造される可能性が否定できない。高温のRDFが搬入されれば、発酵や酸化が加速される。

(4) 化学的酸化: 4000立方メートルの大きなタンクに大量に蓄積されているので、上記に示すような何らかの原因で発熱があれば、蓄熱する。天ぷらのあげカスなどの特に酸化されやすいものでなくとも、容易に酸化される。

 

2.爆発原因

(1) 熱分解ガスの発生があった。 高温で空気遮断条件下では熱分解が起こる。同時に水性ガス化反応、発生炉ガス化反応が並行して起こる。

(2) 嫌気性発酵による可燃性ガスの発生が起こった。

(3) 空気の混入により、可燃性混合気が形成された。 

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

新技術は、新しい危険も生み出すという典型的な事例である。テレビで何日も報道されていたから、ご記憶の方も多いと思う、10年前の事故である。

三重県企業庁のサイトでは、RDFのことと、この事故の結果報告がまとめられている。平成25年現在の運転状況を含めて、詳細な報告が公開されているから県としても力の入った事業であることは察しがつく。

RDFは、確かに素晴らしい技術だが家庭用の生ゴミは、様々なものが入り混じっているからその扱いは注意を要する。集められた時点では、水分を大量に含んでいるから燃えることはないだろう。しかし、乾燥すれば燃えやすくなり、酸化し易い天ぷら油などが含まれていると、自然発火の可能性は十分ありえる。そもそも、燃えやすいものだから、火力発電などの燃料になり得るのだ。

どう考えても家庭用の生ゴミは、性状が安定しないものだと思う、場合によってはゴミの選別も必要だと思う。生ゴミなら何でもOKが売りなのかもしれないが、安全には変えられない。

ところで、この事故で一番拙かったところは、2002年12月に運転を開始した直後の12月23日に火災が発生していながら、原因を徹底調査せず、しっかりとした対策を怠ったことにある。小さな事故が頻発するのは、大きな事故の前触れであることは、このブログで何度も説明したと思う。企業庁サイトでは、事故調査の最終報告書をアップしているが、発火原因、発火のメカニズム、その対策は書かれていてもその前に発生した小さな事故のことは触れていない。なぜ、その時点で対策しなかったのか、本当に知りたいのはそちらである。

RDFは、地球環境に優しい新技術である。三重県としてはなんとしてもこの事業を成功させる必要がある、小火(ボヤ)が発生したなら、発生しないようにしろ」と誰かが言ったのだろうか。もし、何かの圧力で無理矢理事業が進められたなら、設備が古くなった頃、再び事故は発生するかもしれない。