takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

磁気共鳴映像法での診断中、検査技師の不注意で金属ボンベが頭にあたり患者が死亡

2001年(平成13年)7月31日、米国ニューヨーク州ニューヨーク市、某Medical Centerで磁気共鳴映像法 (MRI) にかけられた 6 才の幼児が死亡した。

 原因

MRI の作動時に不注意にも部屋の隅に置かれてあった金属製の酸素ボンベが MRI に引き寄せられ、幼児の頭部に当たった。

 対策

MIRは電磁気を帯びる可能性のある金属を機器の周囲や内部に置くと、MRI の磁場に引き寄せられるため危険だとされている金属性の酸素ボンベを同じ部屋におくべきではない。かつ考えられる対策として金属物の固定、危険物に対する取扱のマニュアル化などが必要。

 知識化

金属物を引き寄せる磁場が出る部分が開いているMRIの構造そのものの見直しが必要であるという事がわかった。

 背景

MRI は 10 トンの磁石による電磁波を使用して人体の立体画像を撮るための機器だが、磁場は地球の約 3 万倍となり、電磁気を帯びる可能性のある金属を機器の周囲や内部に置くと、MRI の磁場に引き寄せられるため危険だとされている。

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

こんなことがあったと知って驚いた事故である。通常、MRI検査室に鉄製の物体を置くということはない。さらに、磁石に向かって飛んできた酸素ボンベが偶然頭に当たると言うのも確率的には相当低いはずだ。お子さんを失った両親も、また、本人も気の毒としか言いようがない。私もMRIの検査を受けたことがあるが、部屋の中には何にも置いてなかった。加えて、通常は磁気に反応しないチタン製の腕時計も外して検査を受けた。検査時の騒音がひどいことは知っていたので余り気にならなかった。もちろん、磁気による体調不良も特になかった。

MRIは、医学におけるその重要性と応用性が認められ、2003年には、"核磁気共鳴画像法に関する発見"に対して、ポール・ラウターバーとピーター・マンスフィールドノーベル生理学・医学賞が与えられている。なにしろ、生きてる人の脳、あるいはどの部分でも鮮明な内部の映像が得られるのである。しかも、レントゲンと違って被曝も無い。そのため、脳の部分的な機能を調べるために様々な実験にも使用されている。例えば、MRIに入った状態で母国語が日本語の人に英語で話をしてもらうと、日本語で話している時と異なる場所が活性化する。それにより、母語第二言語は脳の異なる場所で処理されていることが分る。残念ながら、今のところ検査装置は大きく(下の写真は東芝メディカル製)穴の中に入らなければ検査ができない。そのため、楽器を演奏したり、絵を描いたり、運動をするということはできない。

 

しかし、それでも この検査装置によって脳に拘わる病気の検査や脳機能の研究が一気に進んだことは間違いないのだ。昔は、幅2センチ程度だった一列のマグネットは、現在64列、幅も20センチを越え検査時間は1/10と短くなっている(古い機械を使っている病院もある)。今後も、映像はより鮮明になり、検査時間は短く、検査時の騒音も低く抑えられることになるはずだ。