takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

温度の単位、最初に決まったのは「華氏」

科学の世界で温度を表記する場合は、七つのSI基本単位の一つ、絶対温度、K(ケルビン)を使用する。しかし、一般の人が生活する中で気温とか、体温、お風呂の温度等を言う場合、日本では摂氏◇ 度と表記している(あるいは、「◇ ℃」)。逆に、アメリカや西欧諸国の英語圏では、華氏表記が使用されている。華氏で表記すると、地球上のほとんどの地域の気温が0°F~100°Fの間に収まる。日本人は摂氏温度に慣れているが、華氏温度に慣れている人は、冬場、特に異常気温でもないのに「マイナス◇ ℃」と表記があると、違和感があるようだ。

 

さて、その温度の測定だが、これが正確に決まったのは比較的新しい。測定の基準と方法を考えたのは、ポーランド・リトアニア共和国、王冠領プロイセングダニスクで生まれ主にオランダで活動した技術者兼物理学者、ガブリエル ファーレンハイト(1686年5月24日 - 1736年9月16日)である(今で言えばドイツ人)。華氏という表記は、ファーレンハイトの中国表記「華倫海特」から最初の一文字を取っている。

 

ファーレンハイトは、目に見えない温度を正確に測定するにはどうすれば良いか考えた。彼は、温度の基準に何を使用したか、先ず低い方は、「氷と食塩を混合したものが溶け始めるときの温度」。氷に食塩を振りかけると吸熱反応により氷の温度が下がる、この性質を利用し、当時としては人工的につくれる最低の温度を作りその温度を0度と決めた。次に高い方の温度だが、これは、健康な人間の体温が一定不変であると考え、その温度を96度と決めたのだ。96なんて中途半端な数字ではあるが、2,3,4,6,8,12,24と様々な数字で割り切れるため、計算が便利だったのである。

 

また、ファーレンハイトはそれまで一般的に使われていたアルコール類を使った液柱温度計の不正確さを、純度の高い水銀を使用し、さらに、精密な製作技術で温度計の精度を高めた。また、ファーレンハイト自身の温度計を使って様々な液体の沸点を計測した。そして沸点が液体ごとに異なること、および大気圧によって変動することを発見したのである。

 

ファーレンハイトの測定では、水の凝固点が31.2度、沸点は206.5であることも分かったのだが、彼はここで少し変わったことを行った。水の凝固点と沸点の間隔を計算したのである。

 

206.5-31.2 = 175.3

そして、彼はこの「175.3」が気に入らなかった。「180なら、約数がいっぱい有って便利なのに」と考え、目盛りの定義を変更し、水の凝固点を32、沸点を212と決め、その間、水銀が膨張する長さを180等分したのである。こうして決まったのが、華氏温度表記、「◇ °F」である。

アメリカへ行く機会があったら、街角にある気温が表示される電光掲示板をご覧頂きたい。「100°」と表示されていて驚くかもしれない。感覚的には、0°が海水が凍る温度、100°は、通常に動いている時の人の体温と覚えておけば良い。もっとも、アメリカでも化学の実験などでは、摂氏温度を使用しているらしい。

 

参考文献

「単位がわかると物理がわかる」・和田純夫、大上雅史、根本和昭著(ベレ出版)

2003年3月17日-第4刷発行

「単位171の新知識」・星田直彦著(講談社・ブルーバックスシリーズ)

2005年6月20日-初版第1刷発行

理科年表2011