takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

深夜の駐車場で突然荷台のドラム缶が破裂、近くにいた人が火傷を負った

2000年(平成12年)7月3日、神奈川県 川崎市の屋外駐車場で、駐車中のトラック荷台に積載されていた200Lのドラム缶が破裂した。爆発により、内容物の廃塩化メチレンで1名が化学火傷を負った。     

 

経過

機械部品の洗浄に用いた廃塩化メチレン200Lのドラム缶をトラックの荷台に積載し夜間放置した。深夜このドラム缶が突然破裂し、偶然トラックのそばにいた人が薬症を負った。

 

原因

この塩化メチレンはアルミニウムの切削に繰り返し使用されたもので、塩素を含む強酸になっていた。さらにアルミニウムの切くずが存在したため発熱反応を伴って水素が発生した。塩化メチレンの製造メーカの見解は、塩化メチレンは、定常状態で微量の塩化水素を発生するので、安定剤を加えてある。しかし、何年も交換洗浄などを怠った場合、添加された安定剤だけでは塩化水素の発生を抑えることができなくなる。

 

対策

1.部品などの洗浄に使った有機溶剤は、アルミニウムなど切り子や錆と混在させないために濾過除去を行う。   

2.ガスが発生した場合安全な場所に放出する。

 

知識化

アルミニウムと塩素系有機物は発熱反応を起こすことが多い。廃棄物処理では混合による事故が起こりやすい。

 

背景

塩素系溶剤がアルミニウムと共存すると、反応しやすい(場合によっては発熱的に反応する)ことを認識していなかった。塩化メチレン製造者は、塩化メチレン取り扱いの技術資料を配布し、指導している。また、クロロカーボン衛生協会では、金属洗浄分野での塩化メチレンの適正使用に関して詳細なマニュアルを作成してある。さらに、塩化メチレンを含む廃棄物の処理は、関係法令を遵守するよう定められている。これらの法規制や指導が十分に理解されていなかった可能性がある。

 

 //// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

物損は、3トントラック1台破損と吹き飛んだドラム缶の上蓋による民家2軒の屋根が破損。そして、偶然そばにいた人が塩化メチレンで火傷を負った、という事故である。正確な知識を持たないで危険物を扱うと事故に繋がるという分かり易い例の一つである。

 

失敗知識データベースでは日付が3日になっているが、どうも2日が正解のようである、或いは深夜の発生だから日付をまたいでいるのかもしれない。トラックが破損してドラム缶の蓋が飛んだほどの破裂事故なら火傷を負った人はさぞ驚いたことだろう。気の毒なことだが、重傷ではなかったようなので不幸中の幸いとしか言いようがない。日中の人通りが多い時なら大事故になったかもしれない。

 

問題の塩化エチレンだが、1999年に発生した所沢市ダイオキシン騒動以来、塩素を含有した洗浄液や切削液は使用されなくなった。そのため、現在では塩素系有機化合物そのものが殆ど見られなくなっている。ちなみに、40年以上昔なら殺虫剤として散布されていた。また、私が現在の会社へ入社した昭和62年(1987年)頃は、金属の洗浄剤として大量に使用され廃液は処理業者に引き取ってもらっていた。しかし、使用する時は特に厳しく管理されていた訳ではないから、外部環境中にも流出していたと思う。恐らく、体の中にも吸い込まれていたと思うが、20年を経た現在、癌を発症した人はいない。