takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

あわや大爆発、水素ボンベ運搬中の衝突事故

2001年(平成13年)5月01日、可燃性の圧縮水素をつめたボンベ10本を水平にして積んだセミトレーラーを引くトラクターが、米国オクラホマ州ラモナの国道75号線を走行していた。セミトレーラーは左側の車線を時速約65-70マイル(時速104kmから112km)で北に向かって走行していた。そこに、同じく北に向かい、右側の車線を小型トラックが走行していた。トラックは、ゆっくりと左側の車線に入り、他の車に衝突しそうになり、右側の車線に戻った際、右側路肩の一方通行表示に接触した。そのため、再度路上に戻った際に左車線に入り、トラクターの前に進入した。トラクターは、小型トラックを避けることができず右側前方が衝突した。トラクターは国道上で転倒し、その後路肩へ落ち、さらに90mほど進んだ後に停止した。セミトレーラーはトラクターに接続したままであったが、セミトラクターは横倒しになり、トラクターは完全に逆さ状態になった。積まれていたボンベ一本は外れ、約16m離れた場所へ転がり、他のボンベ、弁、パイプ、取り付け具なども破損し、水素が漏れ始めた。水素は点火し、セミトレーラーの後部を焼いた。小型トラックも路肩に落ち、フェンスに衝突し、燃料供給線が破損し、小型トラックも火災となった。トラクターの運転手は死亡し、小型トラックの運転手は重傷を負った。

不幸中の幸いではあるが、水素ボンベは1本だけしか燃えなかった。1本の燃焼により他の9本が高温になり爆発していたら被害はもっと大きくなっていたと思われる。この事故で国道は12時間にわたり閉鎖され、付近の住民は爆発に備えて避難している。

 

原因

小型トラックとトレーラーの衝突は、小型トラックがコントロールを失ったためであるが、なぜ小型トラックの運転手がコントロールを失ったのかははっきりしていない。この運転手は糖尿病を患っており、各種の薬を使用しているが、事故前の本人の記憶が定かでないため、薬が影響したかどうかは判明していない。事故直後の検査では、血糖値は正常であった。天候は良好で、事故に起因していない。また、この衝突が火災に及んだのは、ボンペ、弁、パイプ、取り付け部などが正しく固定されていおらず、さらにボンベが充分に衝撃などから保護されていなかったためである。トレーラーの運転手は、正常に運転していたが、突然現れた小型トラックは避けられなかったのである。

加えて、この事故による物損は日本円で1,900万円。

 

対策

交通保安局は、調査の結果次の提案を行った。有毒物のボンベを水平にして運搬する場合の運搬方法、固定方法等を詳しく定義し、規則とする。またどの方面から衝撃を得ても破損や漏れが起こらないように保護することを義務付ける。

 

//// ここまでは、失敗知識データベースから省略・加筆して転載した。

 

日本でも、薬物吸引後の運転を原因とする事故や、脳の病気を原因とする事故が発生している。神経や脳に作用する薬物を故意に吸引、摂取して運転した場合はそれだけでも犯罪と言って良いと思う。飲酒運転と同じ、あるいはもっと悪い。

また、水素の様な可燃性の高圧ガスを運搬するのに、法規制が杜撰であることもアメリカ的だと思う。事故を起こしたら責任は自分で取れと言うことなのであろうか。オクラホマ州は、米国中央部分のやや下側、テキサス州の上に位置する州だが、石油、天然ガスなどの資源に恵まれている。海には面していないから、トレーラーや鉄道で採掘された資源を運ぶことは多いと思う。上記の事故後に法規制は強化されたようだが、今後、大きな事故が発生しないことを祈る。