takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

土佐くろしお鉄道宿毛駅衝突事故

2005年(平成17年)3月2日の20時41分頃に土佐くろしお鉄道宿毛線宿毛駅で列車脱線事故が発生した。

高知県宿毛市宿毛駅(行き止り式)構内で、同駅終着の岡山駅発特急「南風17号」(2000系気動車3両編成、乗員2人、乗客11人)が約113km/hの高速で進入、車止めを飛び出して全て脱線・転覆。ATSやEB装置の作動があったものの一切効かず、95km/hの速度で先頭車両は駅舎のエレベーターを破壊して外壁を突き破り、車両は原形をとどめないほどに大破。駅舎も半壊した。この事故により運転士が死亡、車掌と乗客11名が重軽傷を負った。

運転士は前日まで6日間インフルエンザのため欠勤していたが、当日の点呼では異常が見られなかったとしている。事故調査報告書では平田駅出発後に運転を正常に行えなくなる何らかの異常事態が運転士に発生したものと推測し、眠気を催しやすい食事後の乗務であったことなどが指摘されているが、その異常事態が何であったかを特定するには至っていない。

駅手前にある安全装置(保安装置)である自動列車停止装置のATS-SSは、停止信号警報であるロング地上子も、過走防止速照である時素速照地上子も正常に動作して非常制動を掛けた。しかし、その設置位置がロング地上子は最高速度対応ではなく、運転士による減速で約51km/h以下に減速される前提の位置に設置されていた。また2対の過速度防止速照地上子対は全く根拠のない位置に設置されており、地上子配置及び配置規則が適正なものでなかった(当初、宿毛線の最高速度は70km/hで計画されていたが、建設中に120km/hに引き上げられた)。その点が、最高速で進入してきた列車を停止させることができなかった原因であると指摘され、行き止まり駅に限ってそれぞれ是正通達が出された。なお、行き止まり駅以外は最高速度に対応しない設定が、国交省通達上はそのまま残されている。

事故車両は前側2両が原形をとどめないほど大破したため、廃車となった。

この事故を契機に、土佐くろしお鉄道では宿毛駅に過走防止装置としてATS-SS時素式速度照査地上子3対を新設、2対を有効な位置に移設して運行を再開した。JR四国では、行き止まり式の配線を持つ駅、高松駅、琴平駅、宇和島駅、新改駅、徳島駅、鳴門駅、坪尻駅を対象に、宿毛駅と同様の過走防止用ATS地上子を増設(駅から離れた場所)することを決めた。また、高松琴平電気鉄道でもこの事故を受けて、ATS装置を時素式速度照査機能付に更新するとともに、行き止まりの配線を持つ駅6か所を対象に、過走防止用地上時素式速度照査地上子を増設することを決めた。

 

///// ここまでは、ウィキペディアから省略・加筆して転載した。

 

土佐くろしお鉄道株式会社のサイトには以下のお詫びが公開されている。

 

//// 以下、サイトから引用 ////

宿毛駅構内衝突事故について

 

 お詫び

去る2005年(平成17年)3月2日夜(20時40分頃)、弊社は、宿毛線宿毛駅(高知県宿毛市駅前町)にて、特急列車が停止せずに駅構内に衝突するという、申し訳ない事故をひき起こしました。お怪我をされたお客様とご家族の方々、宿毛駅の近隣にお住いの皆様、関係者の方々には深くお詫び申し上げます。

 

弊社は、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)から調査報告書を厳粛に受け止め、関係機関のご指導を仰ぎながら、安全運行に一層の努力を重ねて参ります。お客様に安心してご利用いただける鉄道輸送サービスの実現と継続に向けて、なにとぞご理解とご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。

 

//// ここまで ////

 

全ての安全装置が正常に動作しても、効果がなかったという珍しい事故例である。

なぜ、最高速度で行き止まりになっている駅へ入っていったのか。運転していた本人は、亡くなったためこれ以上の原因は突き止められないだろう。しかし、たとえ故意に列車を最高速度で進入させようとしても防止できるようになっていなければ、本質安全ではない。もう一つ、この事故の後行き止まり駅に限って「過走防止用地上時素式速度照査地上子を増設することを決めた」ということだが、本当にそれで大丈夫なのだろうか。残念ながら、新聞などの報道では、その当りまでは触れられていないようだ。

一番上の行でリンクしている、サイトには大変詳しく事故の詳細が公開されている。ここまで、調べ解析するのは大変だと思う。私は、事故・災害例のコレクターだから一つの事故を深く掘り下げて調べることはあまり行わない。