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takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

重油脱硫装置の反応器出口側空気式冷却器の火災

2000年(平成12年)02月10日、北海道苫小牧市の製油所で、重油脱硫装置の反応器出口側の高温高圧分離槽からの蒸気を部分凝縮する熱交換器で漏洩火災が起こった。これは、空気式冷却器の伝熱管1本が、腐食により開孔し、火災になったものである。発災場所は反応器出口側である。高温高圧での気液分離槽を経て、120℃の水素、軽質炭化水素及び洗浄水混合物を空気式冷却器で40℃まで冷却、部分凝縮している装置である。

当該施設は1998年より稼働を開始した。当該熱交換器は2年前の1998年に3回目の点検をし、軽度の腐食を認めただけで特に問題はなかった。発災当日は、定常運転中で、14:33に突如、当該熱交換器付近から火災が発生した。

伝熱管腐食の原因は、塩化水素によるものと推測される。さらに熱交換器内の流動解析の結果、以下のことが判明した。

1.熱交換器内各パスの上段伝熱管の左右両側で、相対的に洗浄水量が少なくなる。そのため、洗浄水は再加熱され、いったん溶解された塩化アンモニウムが蒸発し塩化水素が発生する。当該伝熱管の液相が残る下部が激しい腐食環境になる。2年前に油種をアラビアヘビー原油に変更したが、同原油は塩素分が多い。ただし、ライセンサーによる塩素濃度の許容値内ではある。

2.着火源は、水素の噴出による静電気と思われる。

対策としては、メンテナンスが重要である。配管材料はSUSを使用していたが、塩素分が多い場合には適切であったかどうか。建設時と油種が変わった場合、その不純物レベルがライセンサーの許容範囲とはいえ、十分な検討が必要であったと思われる。

製油所の事故として、重油の脱硫装置の事故は極めて多い。これは、腐食性の物質が生じやすいことが原因の一つである。言い換えると、製油所で重点的に点検すべき箇所は脱硫装置である。

ある意味では不可抗力の事故かも知れない。とはいえ、同じ装置でこの後も重大事故が起こり、何故同じ装置で重大事故が発生したかに興味を持たれている。つまり、事例としても極めて重要な事例である。熱交換器での同一パス内の伝熱管毎の偏流は通常の設計では考えない。油種変更には一応ライセンサーマニュアルで許容されている塩素分などの不純物レベルを確保しているが、塩素分が増加しているので、注意を喚起すべきだったかも知れない。

 

ここまでは、安全知識データベースの記事を省略・加筆して転載した////

 

少し専門的な事故であり、プラント設備に関連する仕事をしていないと分からないことかも知れない。2月10日には、この4年前(1996年)に北海道後志管内古平町の豊浜トンネル岩盤崩落事故があり、この事故では20名の方が亡くなっている。逆に、上記の火災事故で人的被害は無い。しかし、岩盤崩落は、予測し回避できるのか判断できない事故である。それに対して、脱硫装置の火災事故は、適切な保守、メンテナンスによって防止が可能な事故であり、また、防止しなければならない事故である。データベースの記事にあるとおり、「重油の脱硫装置の事故は極めて多い」しかも、原因は分かっている。この種の事故を防止できる技術が確立できれば、その技術を輸出することも可能であり、現に、日本のメンテナンス技術は外貨獲得の効を成している。

他国の話になるが、現在、お隣の大国は石炭火力の発電所を全国に作っている。世界の工場を自認する国だからそれは良い。しかし、石炭には不純物が極めて多く、また、その不純物は設備の老朽化を早める物質ばかりである。今は、新しいから問題ないと思うが、10年~20年先が気になるところである。大きな事故が発生すれば、少なからず日本の経済・環境にも影響はでる。