takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

ブリティッシュ・エアウェイズ38便事故

2008(平成20年)年1月17日午後12時34分(現地時間)にイギリスで発生した航空事故である。死者は出なかったが、ボーイング777としては1995年に就航して以来初めて機体が大破・全損する事故となった。低温環境で長時間飛行をした際に燃料供給システム内で水分が凝固し氷が生成され、エンジンへの燃料の供給が制限されたことから着陸直前に搭載エンジンの推進力が失われたと見られている。

中華人民共和国北京首都国際空港からイギリスのロンドン・ヒースロー空港に向かっていたブリティッシュ・エアウェイズ38便はユーラシア大陸を横断する長距離飛行のあいだ何も異常はなかった。しかし、38便は滑走路の手前3.2km、高度183mの地点からエンジンのスロットルへの反応が全く無くなった。そのため38便は、急激に高度を落していった。その結果38便は、滑走路手前から300mの不整地へ墜落し、機体下部を地上に擦りながら滑走路直前で停止した。機体はその衝撃で右主脚が脱落し、左主脚が左主翼の付け根を破損させ、エンジン及び主翼から燃料が大量に漏れたが、火災は発生しなかった。そのため、全員が緊急脱出に成功し、機体が大破しながらも死者は出なかった。それでも、墜落の衝撃などで乗客1人が重傷、乗員4人と乗客8人が軽傷を負った。

事故機となった38便は、ボーイング777の通算342号機で2001年5月18日に初飛行し、同年5月31日にブリティッシュ・エアウェイズに引き渡されたものである。エンジンはロールス・ロイスのトレント800型。ブリティッシュ・エアウェイズが所有している45機のボーイング777の中で42番目に受け取った機体であり、新鋭機であった。

事故原因として、当初はエンジン2基が同時に故障したためとの推測もあったが、搭載エンジンのトレント800は信頼性の高いエンジンであり、それが同時に故障するのは非常に確率が低いとされた。しかし、事故調査を行っていた英国航空事故調査局(AAIB)は2008年9月に公表された中間報告で、燃料中の水分が凍結したことが事故の引き金になったとの見解を示している。それによると燃料供給システム内で氷が生成されエンジンに送られる燃料が制限されたというものである。

2010年2月に公表された最終報告で、英国航空事故調査局(AAIB)は事故の原因として飛行中に燃料供給システム内で燃料中の水分が凝固し、燃料/オイル熱交換器に詰まり、エンジンに供給される燃料が制限され、両方のエンジンの推力が減少した為としている。氷の生成はこの航空機が長い時間低温環境で燃料流量が少ない状況で飛行を行った間に燃料供給システム内で起きたと考えられ、着陸アプローチ中に突然自動スロットルが燃料供給を一気に増量した結果、燃料供給システムに溜まっていた氷がFOHEに殺到した事で燃料供給が滞り墜落に至ったというものである。

現在、ボーイング社の最新鋭機787では、トラブルが多数発生し国土交通省が発行する耐空証明が一時的に取り消されている。多数の小さなトラブル発生は、大きな事故の元となることが多いのは、これまで書いてきたとおりである。私は、787便の事故を予測するわけではなく、望む訳でもない。現在発生している小さな事故にしっかり対応し問題点を解決して、大事故、人身事故を防止して欲しいと思っているだけだ。

日本国内では、1996年6月13日にインドネシア航空865便DC-10-3が福岡空港を離陸中に炎上事故を起こし死者3名を出してから死亡事故は発生していない。記録と書くと変かもしれないが、これは、是非とも継続して事故を防止してほしい。